翌日。
士は前日のテストコースへ向かっていた。
昨夜は結局光写真館に鬼達を迎える事になり、大勢の来客に栄次郎は嬉しそうだった。
彼等も今日は一般人として、近くから見物に来るらしい。まあ公開テストではないから、何処まで近寄れるかは定かではないが、ゴズマとか言う敵の襲撃も考えられる事、原因不明の時空融合、あるいは分離修復がいつ発生するとも限らない事から、なるべく近くに固まっていたいらしい。何せ彼等の出現現場はテストコースだったのだから。
テストは1日遅れたが、特に大きな問題は無いらしい。何でもオリジナルを使用していた宇宙人が近々地球を再訪するらしいので、それ迄に基礎データを揃えた上で監修してもらうってスケジュールだそうだ。
「まっ、俺は何をやらせても一流だからな、きっちり限界迄性能を引き出してやるさ」
(夏美にはそうウソぶいて出掛けて来たが、案外夏美に上手いことのせられたのかな、こんなどうでも良い事に前向きになるなんて。)
そんな事も考える士だった。
しかし、士の思いとは裏腹に、この日もどうやらテストは行われそうになかった。
士が到着した時には、そこは既に戦場だった。
コースに近づき、騒ぎに気が付いた時は
「海東のヤツが何かやったのか?」
と思った士だったが、何の事はない、ゴズマの襲撃だった。
自分に危険が及ばない限り、傍観者を決め込むのが士のスタイルだ。まったく、以前怪人に襲われる娘を庇って倒してみれば、悪いのは娘の方だった、なんて事もあったのだから、慎重になろうというものだ。
そうは思っても、目の前で危機にさらされている人がいれば、ついつい助けてしまうのも士だった。しかし、今はその心配もなさそうで、士は全くヤル気をみせて居なかった。
一般隊員はきびきび動き回り、戦闘のサポート…邪魔にならないのが一番の貢献とばかりに避難していた。
今日は車も表には出ていない。視界の片隅に存在を認めたが、まだ出す前だったのか、手際良く片付けたのか、どうやら被害は及びそうにない。
そして目の前で繰り広げられる戦闘では、ヒドラー兵がなぎ倒されていた。
赤、黒、青、桃色、白の5人の戦士がどうやら地球側の戦士…昨日隊員や海東から聞いたチェンジマンと言うものらしい…が圧倒していた。
(殿様の所と同じだな、あちらは6人だったが)
ヒドラー兵が全滅し、指揮官らしき怪人が残った。流石に怪人は強かったが、士はあくまでも傍観していた。プロの戦いに水を差すものじゃない。
予想通り、5人の戦士が勝った。最後はバズーカ砲みたいな物で怪人を爆死させた。しかし士は忘れていた。この世界で最初に見た光景を。
新手の赤い、異様に長い腕の怪物が現れると、奇声を発しながら大きな1つ眼を見開いた。
「ギョギョギョギョギョギョギョギョギョーッ」
怪物の眼から発する怪光線が、先に爆死した怪人が居た辺りに注がれると、死んだ筈の怪人が巨大な姿で蘇った。
「昨日見たのはこういう事だったか、大体判った。」
こうなると、ますます士はやる事がない。逃げ惑う民衆がいる訳でもないのだ。後はプロが何とかするだろう、昨日のロボットで。
しかし、士の予想はまたも外れた。
巨大化怪人とは別の敵が現れて、5人の戦士の足留めをしたのだ。
双頭の飛竜…巨大化怪人より尚大きい…それが上空から攻撃してきていた。
「どうやら今の内に、貰える物だけ貰って帰った方が良さそうだね。」
海東が現れて言った。
「お前、このタイミングであのロボット盗む気か?」
士の口調が少し荒れた。自分たちの世界ではないが、ここでロボットを盗まれたのではこの世界の人々は堪るまい。
「僕だってそこ迄鬼じゃない、それに、チェンジロボはチェンジマン以外が動かしても大した性能は出ないんだ、アースフォースが無いとダメらしい。僕の狙いはアレさ。」
指差す先にはラジエッカーが有った。
「アレはレプリカだぞ。」
「手ブラで帰るよりはマシさ。とりあえず持っておいて、近々来るって宇宙人のオリジナルとすり替えても良いし。」
「借り物だったらしいから、アレで来るとは限らないぞ。」
飛竜と巨大化怪人の攻撃が激しくなり、2人は会話を中断した。
どうやら本格的に危ないようだ。
気が付くと戦士達は、傷付き、倒れていた。
起き上がっては銃で反撃しており、闘志は萎えてはいないようだが、強化スーツ程度の装備で太刀打ちするには荷が重い相手だろう。しかし、ロボに乗り込む隙を与えるような、ヌルい攻撃はしてこないようだった。
「ここで彼等が死ぬようだったら、チェンジロボを諦めちゃ勿体ないけどね。」
「手を貸してやるのか?」
「そんな義理もないし、貰う分には彼等が居ない方が好都合さ。」
その時、上空に新たな影が現れた。
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テーマ:裏設定 | 投稿日時:2010/01/02 17:17 | |
TCGカテゴリ: レンジャーズストライク | ||
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