士はレース場のような所に連れてこられた、どうやらテストコースらしい。
レーシングスーツに着替えさせられた事からして、テストドライバーという事のようだ。
道中男から聞いた話によると、この制服は電撃戦隊と言う組織のもので、電撃戦隊は地球守備隊の精鋭で、侵略宇宙人と戦っているらしい。
今回のテストは、善意の宇宙人が乗ってきた車?を、もたらされた技術等を取り入れて再現したレプリカ品の性能チェックという事だった。
コースに出た士は愕然とした、こんなフザケタ物に乗らなくてはいけないのか?
そこには猫の顔の付いた車が待っていた。
「似合ってるよ、士」
整備士の格好をした海東が隣に来ていた、毎度の事ながら、どうやって潜り込んだのだろう。
「五月蝿いぞ、海東。…ここにお前の言う、お宝が有るって言うのか?」
「本来この世界には無い筈のお宝を見かけてね、見過ごせなかったって訳さ。まあレプリカなんだけど。」
彼の視線はあのフザケタ車に注がれている。
「そういう訳で士、協力してくれないか?」
「誰が泥棒に協力なんてするか!」
不毛な会話をしていると、見慣れたオーロラ?がその場を横切った。
「今のは…ウッ。」
怪しい影に飛び掛かられた2人は、咄嗟に身をかわした。
怪物が2人を睨み付けていた。見るからにおぞましい姿だが、何処か見覚えがあった。見た事の無い怪物ではあったが、怪物は怪物なりに種族毎の特徴めいたものがあるものだ。
「これは…魔化魍か?ここはライダーの居ない世界って言ってたよな、おかしいじゃないか。」
「今世界を渡ったって事じゃないのか?」
「鬼の居る世界か…。」
言葉を交わしながら、2人はカードを取り出していた、変身の構えだ。
その時、トランペットの響きと共に、魔化魍は白煙に包まれた。
煙の向こうに、魔化魍に駆け寄る影も見える。そしてギターの、太鼓の音も響き渡る。
魔化魍は爆散し、煙の晴れたそこには見知った顔があった。
顔の変身を解除した、アスム達…響鬼の世界で知り合った、鬼と呼ばれる音撃戦士達が立っていた。知らない顔も混ざっているが、姿から仲間なのだろうと判る。
「大丈夫ですか、師匠」
「大体無事だな…余計な事を…」
「問題ないね、少年くん」
士は憎まれ口を叩き、海東は飄々としている、いつもの2人だ。
「響鬼の世界…か…」
しかし、猫の顔の車は、変わらず側にあった。
「どうやらこの世界も、融合が始まってるようだね」
足元を火線が走った。
気が付くと銃を構えた一団に包囲されていた。
その集団の構成員は異様な出で立ちをしていた。
金髪とも銀髪ともつかない、色の抜けたボサボサの髪、滑りを帯びたかの様に、テラテラと光る青い肌。
銃を持っていない者も居たが、半月刀のような円形の、中心部を握る武器を手にしていた。そしてその顔は悪鬼の様な形相をしていた。
顔立ちから、士はつい口にした。
「武器を持った魔化魍…まさかな。」
「あんな魔化魍なんて居ません、武器を…ましてや銃を持った魔化魍なんて…」
直ぐにアスムが返した言葉を海東が繋いだ。
「あれはヒドラー兵、この世界で地球を狙う、大星団ゴズマの尖兵さ。つまり…」
「戦闘員か、大体判った。襲ってくるなら蹴散らすまでだ、変身っ」
カメラにも似た変身ベルト、ディケイドドライバーに、カードが収まり、1/4回転する時、シャッター音と共に音声が流れる。
「ディディディディケーイド!」
海東も変身していた。銃そのものとして武器としても使う変身アイテム、ディエンドライバーにカードを装着して天に向けてブッ放す。
「ディエーンド」
轟音と共に音声が響く。
アスム達も変身する。彼等音撃戦士の変身は勿論音を伴う。アスムは音叉で、他の鬼達もそれぞれのアイテムで音を発する。
一行の動きが、一種の不協和音を産み、それに怯んだかヒドラー兵達の対応は遅れた。
戦闘は呆気なく片付き、士達は皆無事であった。
周囲が所々燻っていたが、それさえなければ戦闘があったとは思えない、平穏な空気が流れていた。既に皆、変身を解除している。とは言えアスムはじめ鬼達は顔以外はまだ変身したままだ。これは警戒感というより、着替えを用意しないと全裸な為恥ずかしいからである。
猫の顔の車はやはりそこにあった。見る限り目立った傷はない。
士を連れて来た隊員が話掛けてきた。
「ラジエッカーも無事なようですね。けど、今日のテストは中止になりました」
「そうか」
「何を他人事みたいに言ってるんですか、さっさと片付けないと。君もだよ!」
整備士の格好の海東にも声が飛ぶ。
抜け出すタイミングを逸したと見て、海東もそれらしい振る舞いで一先ず従う。そんな海東に、アスムが声をかける。
「師匠、これは一体…」
「どうやら世界が融合しているようだね。まあ士が何とかするさ。ここはのんびり待つしかないね、少年くん!」
残された鬼達は、行く当てもなかったがとりあえずその場を外れる事にした。ここが何らかの(それも恐らくは軍事系の)組織の施設である以上、取り調べ等にかかっては面倒である。
その時アスムは、付近に開いた穴の中に、何か光る物を見つけた。
近寄って拾い上げると、それはこけしの様な姿の人形であった。
鎧武者のような顔をして、胴体には鍵穴のようなものがあった。
気になって捨て置く事も出来ずそれを大切そうに握り締めた。
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テーマ:裏設定 | 投稿日時:2010/01/02 15:14 | |
TCGカテゴリ: レンジャーズストライク | ||
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