第2話:スポーツの秋
澄み渡る空。秋といえば夕焼けをイメージしやすいが、青空も良いものだ。
特に秋の青空は、夏の青空とは違う、秋らしい雰囲気が出ている。
せみの鳴き声からすずむしの泣き声へ。そんな季節の変わり目が、空にははっきりと現れる。
秋といえば何を想像するだろうか?と聞かれれば万人が異なる答えを示すだろうが、「運動会」といえば、やはり季節は秋だと答える人が大半だろう。
「春季大運動会」というものも学校によってはあるらしいが……それはともかく、ここToCaGe学園でも運動会が行われる。一応、普通の運動会だ。
現在、その運動会の練習を行っている。どうやら今は徒競走の練習のようだ。
徒競走の練習、といっても、大抵は並び方や移動を練習したり、最初のうちは実際に走らず、走るとしても最初の組だけ、というパターンが多いだろう。
しかし、某体育委員の提案から、「練習から全力で走ること」が決まってしまったのだ。運動嫌いな生徒にはいやな知らせだ。
さて、その迷惑な体育委員の人物は徒競走の練習真っ最中だ。
あの色黒でいかにもスポーツマンな女子?いやいや、どう考えても文化部にしか見えないあのめがねっここそ、くだんの体育委員、川原かけるだ。
いつもかつも、登下校のときでさえ走っている。また、陸上部と水泳部を掛け持ちしている無類の運動好きだ。
その走っている姿から、「かけっこ」と「かける」をかけて「かけ子」と呼んでいる。運動をしている彼女は、いつも楽しそうだ。
運動会の練習が終わり、かけ子は運動会についての話し合いに出席した。当然、委員長の私も出席。
運動会といえば、徒競走以外の個人戦がもうひとつある。障害物競走だ。
この障害物競走、体育委員で毎年いろいろ趣向を凝らしているが、毎回ぎりぎりになってようやく決まるものが多い。何しろ、観客から見てわかりやすく、かつおもしろいようなものにしなければならないためだ。今日は障害物競走の障害についての話し合いだった。
と、ここでなにやらもめごとが。どうやら、その障害物競走の内容で言い争いが起こったようだ。
「いいや、ここは途中でぬか漬けを食べるぬか漬け食い競争だ!」
と、男子生徒。
「いえいえ、途中で的にボールを当てなければ進めないシューティング競争よ!」
と、こちらはかけ子の提案。
どう考えてもぬか漬けは却下だろ、と思ったが、おもむろにその男子生徒はかけ子にカードを突きつけた。
「だったらデュエルで勝負!勝ったほうの案で決定だ!」
「あら、スポーツの後のデュエルも良いわね。いいわ、受けましょう♪」
軽々しくデュエルを受けるかけ子。おい、お前が負けたらぬか漬け競争になるんだぞ。
体育委員会メンバーが見守る中、デュエルがスタート。
「私のターン、【韋駄天の走者KIDO】登場よ♪」
「げ、1ターン目からキャラクターかよ……」
かけ子の戦術は、彼女の走る姿に似つかわしい速攻。
軽量なキャラクターでどんどん相手を攻めるのだ。
「く……なら、【伝説の絵師ササメ】登場だ!」
「あら、なかなか強いキャラクターね。なら、えーっと、エクイップカード【ラッキー・スター】を【韋駄天の走者KIDO】につけちゃうわ♪」
「エクイップカード」というのは、簡単に言えば装備カードだ。キャラクターにつけて能力を強化する。
「ええい、【伝説の絵師ササメ】で【韋駄天の走者KIDO】を攻撃!」
「あらあら、残念ながらそんな攻撃、KIDOっちはあたらないわよ♪」
走りかけるかけ子のように、キャラクターの攻撃があたらない。
回避が得意なキャラクターを使いこなすのも、かけ子の得意分野だ。
「さてさて、そろそろとどめの準備にかかるわ。【特撮ランナームノー】登場よ」
「うぅ……攻撃があたらないなら、これでどうだ!【遠征の達人タブリス】登場!さらにハプニングカード【徹夜確定】!動き回るキャラクターは一気に疲労するぜ!」
どうやら回避の得意なキャラクターを攻撃するハプニングカードのようだ。【韋駄天の走者KIDO】にはかなり効いている。
「あら……KIDOっちがやられちゃった。でもムノーくんがいれば大丈夫よ♪【都会の森林浴者イチノセ】登場、さらにハプニングカード【交通費貧乏】使用!ムノーくんといっちーの一斉攻撃で終了ね♪」
「な……そんな……早すぎる!」
5ターンで終わった。さすが韋駄天ランナー。デュエルのほうもスピーディーだ。
「さて、今回の障害物競走は野球とサッカーとバレーボールの組み合わせね♪」
待て、そこまでは聞いてないぞ。
しかし、イベントを考えているときの彼女も楽しそうだ。
運動に関することにはいつも楽しそうにすること。それが彼女の強さなのかもしれない。
登録タグ:
テーマ:小説 | 投稿日時:2009/09/29 23:08 | |
TCGカテゴリ: | ||
表示範囲:全体 | ||
前のブログへ | 2009年09月のブログ一覧へ ブログ一覧へ |
次のブログへ |