/(^゜ω゜)\<フィーカスの徒然日記は君が投げて捨てちゃったじゃないかww

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風の守護霊 Vol.3

<font size=2>
<b><i>Vol.3 その場所と違う場所</i></b>

目覚まし時計の音は休みなくなり続く。
自分でセットしているとはいえ、いつ聞いても不快な音だ。
というより、これが心地よい音だと再び眠りについてしまうかもしれない。そうなってしまっては目覚まし時計の威厳もなくなってしまうわけだが。
けたたましく部屋中を震撼させるごとく鳴り響く目覚まし音を止めるため、目覚まし時計を殴りつける。
一発ではとまらず、二発ほど殴ってやると、観念したように轟音は鳴り止んだ。
午前7時。窓のほうを見てもまだ朝日は見えない。
さて……と、着替えをしようとした瞬間、
「おはよう、シュンスケ」
<ruby><rb>守護霊</rb><rp>(</rp><rt>クラーメル</rt><rp>)</rp></ruby>のことを思い出した。
「……やっぱり夢じゃないよね。あまりにリアルすぎると思った」
「あら、こんなにきれいなお姉さんがいるのにあたかも夢ならよかったみたいな言い方はひどいわね」
自分できれいなお姉さんとか言うか、などと思いながら下の階から衣服を持ってくる。
その場で着替えようとしたが、クラーメルが気になり、部屋から出て行った。
「どうしたの?」
「着替えるんだよ」
「ここで着替えればいいじゃない」
「おまえがいるからだろ?」
「いつもは私の目の前で着替えるのに?」
そうだった。
クラーメルの姿が見える前はずっと彼女の目の前で着替えていたことになる。
どっちにしても、女の子であるのであれば、着替えている男なんて見たくないはずなのだが。
「と、とにかくしばらくどこかにいてくれ」
春佑は急に恥ずかしくなり、あわてて下の階の居間に行った。

制服に着替え、朝食を手早く済ませ、食器類を片付けた後、すぐに学校に向かった。
姉の久美は少し出勤する時間が遅いため、家事を軽く終えた後出勤する。
春佑はいつもの登校路を、いつもどおり歩いていく。
いつもと違うのは、クラーメルが近くにいることだ。
「……というわけでわかったな。学校にいる間は声を出すなよ」
「むぅ、そんなさびしいこと言わないでほしいですぅ」
突然変な口調に変わったのにも気に留めず、春佑はさっさと先に進む。
校門に近づくと、学校の生徒たちが次第に増えていく。
分かれ道からやってくる生徒に、同級生に混じって先輩や後輩たちの姿が見える。
その中に裕樹がいた。
「おはようカガっち、ちゃんと見てきたよ、昨日の……」
「おはようヒロキ、今日も元気そうで」
またもやクラーメルの不意打ち発言に、春佑はびくっとした。
「……まさかとは思うが、カガっち、俺の後ろにいるのが……」
「……ああ、お前もやっと見えたのか。まったく、春佑は鈍いな」
なんということだろう。
姉はおろか、裕樹にまで見えていたとは。
そういえば数ヶ月前から裕樹は別れるとき、自分だけではなく、誰か他の人にも手を振っているようなそぶりを見せていた。
「見えていないのはシュンスケだけよ。まったく主人がこんなんだから私は……」
「……実はこの世界の人間全員がクラーメルのことを見えているとかいうオチはないだろうな……」
不安がりながら、春佑は学校の門をくぐった。

授業中は困難の連続だった。
もちろん、春佑にとって、だ。
数学の授業では、新しく配られた数学Cの教科書に目を通していると、
「きゃぁ、クラーメルの公式だって!私と一緒、私と一緒!」
世界史のテストでは、適当な解答をしていると
「もう、ナポレオンが生まれたのは佐渡島なんかじゃないでしょ!」
化学の時間にいたっては、
「塩酸と~硫酸硝酸混ぜくって~、先生の頭にかけちゃった~」
などと歌っているので思わず噴出しそうになった。
が、もちろん突然噴出すと周囲に不振がられるので、教科書で顔を隠しながら耐えていた。
ようやく昼休みになり、昼食をとる屋上まで行く。
一緒に食べるのはもちろん裕樹。なので、クラーメルのことを心配することはない。
「まったく、しゃべるなと言っておいたのに……」
「むぅ、だって、全然相手してくれないもん」
「いやぁ、強酸の歌は面白かったな」
途中で裕樹がクラーメルを褒め称えるが、春佑はそんな気分ではない。
「たしかに面白かった。が、あそこで俺が噴出したらどうする」
「知らない」
「他人の振りをする」
冷たい返答に、弁当までが凍りついた感触がした。
「あ、そうだ、今日SF研究会によっていかないか?昨日の回答も聞きたいし」
「うーん、興味ないんだが……」
「お菓子もいっぱいあるぞ?」
別にお菓子に惹かれたわけではないが、一度も行ったことないし、行ってみるのも悪くないと考えた。
「時間あるし……わかった、じゃあ放課後ね」
ちょうど話終わったころに昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

午後の授業もクラーメルの妙な精神攻撃に耐えながら、なんとか放課後を迎えた。
SF研究会の部室は教室がある棟とは別の建物にある。
教室棟と管理棟を超えた、特別棟と呼ばれるところの3階の奥の部屋だ。
さすがにオカルトな世界が漂うためか、あまり人通りが見られない。
化学室を通り抜け、ようやくSF研究会の部室が見えた。
「よう、春佑。こっちだ」
ちょうど部屋の前に裕樹がいたため、すんなりと部室に入り込むことができた。
「今お茶だすから」
そういうと裕樹は奥の部屋に引っ込んだ。
周りを見渡すと、あたかも「それらしい」といったものがずらりと並んでいる。
SFというより、オカルト研究会ではないだろうか? そういう類のものばかりだ。
たとえばSFといえば、プラモデルが組み立ててあったり、ゲーム類があったり、そういう感じのはずである。
しかし、この部室は意味不明なお札がたくさんあったり、妙なつぼがあったり、神棚が5つくらいあったりと異様な空間である。
「まさか霊感商法にやられたか?」
などと想像しつつ周囲を見回していると、裕樹が見知らぬ女の子を連れてきた。
「あ、紹介するよ。僕と同じSF研究会の部員、<ruby><rb>黒洋</rb><rp>(</rp><rt>こくよう</rt><rp>)</rp></ruby>アトリアス。こっちは友達の北林春佑」
「あ、はじめまして」
「こんにちは」
背は高くないが、すらっとした体つきで、やや幼さはのこるものの「かわいい」という表現よりも「美人」という表現が適切な顔立ちである。
ただ、第一印象ではあるが、恐らく何を言っても笑わないのでは? と思うほど愛想がなかった。
SF研究会に所属しているから違和感がないのかも知れないが、羽織っている黒いローブが、彼女に神秘的な魅力を与えている。
「むぅ、私は紹介してもらえないですかぁ?」
クラーメルが春佑と裕樹に求めたが、春佑は「あたりまえだろ」と軽く視線を送った。
「わかってるわよ、クラーメル・スフィアート。私も見えているから」
これで3回目なので多少驚きつつも春佑はあまり動揺しなかったが、クラーメルは軽く驚いていた。
「え、何故私の名前を?」
「裕樹から聞いていたからよ。まあ、気にしないで」
そういわれると何がかはわからないが、何かが気になる。
混乱している春佑を尻目に、アトリアスはパソコンに向かった。
「あ、そうそう、昨日の話なんだけど、誰が気になった?」
裕樹からは別の「気になる」話題を聞かれた。
もちろん昨日の妙な霊感番組のことである。
「ああ、そうだなぁ、俺が気になったのは太木先生かなぁ」
「フッ、所詮は素人か。大物を言っておけばなんとかしのげるだろうと思っているのだろうが……」
「いや、別に何もしのぐ気はないぞ」
一応否定はしておく。
これでも一生懸命がんばって考えたのだ。だが所詮は興味ないものは興味ない。それだけだ。
「クラーメルさんは? 一緒に見てたんでしょ?」
「え、あ、私? そうねぇ、ものすごく気になった人がいるんだけど……」
急に目が輝く裕樹。
「誰だい? どんな人だい?」
「えっと、たしか南宗斉雷雲って言う人だったかな……」
裕樹の目が光る。
「さすがだね、クラーメルさん。人間と幽霊では格が違う」
「えへへ、でも、何で気になったのかなぁ?」
たしかにあの時はものすごく気になっていたが、今になって何故気になったのかわからない、ということを裕樹に話した。
そうすると裕樹は食いつき、どんどんと意味不明な世界へといざなっていった。

そうして2時間が過ぎたころ、下校時刻を告げるチャイムが鳴り響いた。
「そろそろ時間ね。私も帰らなきゃ」
パソコンの電源を落としながら、アトリアスは言った。
「ああ、そうだな。今日はいろいろ話を聞けてよかったよ」
「そうか? お前がずっと話してただけだと思うが……」
帰り支度をし、戸締りのチェックをすると、全員部室の外に出た。
裕樹が鍵をかけ、開かないかどうかを入念にチェックする。
「これでよしっと」
校門前まで、軽く話をしながら一緒に歩く。
が、アトリアスはずっと黙ったままだ。
校門からしばらく歩くと、分かれ道に差し掛かった。
裕樹はこのまままっすぐ、春佑は右が帰り道だ。
「それじゃ、気をつけて帰れよ」
裕樹はいつものとおり大きく手を振って行ってしまった。
アトリアスは動こうとしない。
「あれ、帰り道、こっち?」
春佑が自分の帰り道を指し示す。
「ええ、もう少し先に行ったところが私の家なの」
へぇ、と言いながら横断歩道を渡る。
そういえば女の子と一緒に帰るのは小学校以来だろうか。
少し緊張しながら、なんとか重い空気を消したいと考え、質問をしてみる。
「SFが好きなの?」
「ええ、どちらかというと幽霊とかに興味があって……」
「へぇ。裕樹と二人で、普段はどんなことをやってるの?」
「たまに先輩が来てくれるときもあるんだけど、たいした活動はしてないわ」
いろいろと質問攻めをしているうちに、大通りを外れる小道がある分かれ道に差し掛かり、「私、こっちだから」とアトリアスが自分の帰路を指し示した。
「明日は?」
「いや、特に決めてはないけど……」
「暇だったら来てちょうだい。退屈だから」
そういうとアトリアスは帰り道の小道へと向かった。
「あ、そうそう」
ふと立ち止まり、アトリアスは振り向いて言った。
「ナポレオンが生まれたのはコルシカ島。佐渡島なんかじゃないわよ」
なんだか怖い笑顔を残し、アトリアスは去っていった。
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テーマ:落書き投稿日時:2007/01/07 23:51
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