/(^゜ω゜)\<フィーカスの徒然日記は君が投げて捨てちゃったじゃないかww

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風の守護霊 Vol.2

<i><b>Vol.2 知ることと知らないこと</i></b>

<font size=-1>
月明かりに照らされて、いまだにクラーメルは暗闇の中。
それが"幽霊"と知らなければ、あるいは見とれる男性も少なくは無いだろう。
いや、性別年齢にかかわらず、闇の中に輝くものは、おそらく誰でも足を止めて見とれてしまうに違いない。
春佑も、しばらくの間見とれていた。
が、一つ大事なことを思い出し、動かなかった<ruby><rb>身体<rb><rp>(</rp><rt>からだ</rt><rp>)</rp></ruby>が動き出す。
「そうだ、テレビは!?」
爽快に「敵」を倒したクラーメルを尻目に、春佑はさっさと家に戻ってしまった。
「えっ!? ちょ、ちょっとまってよ!」
クラーメルもあわてて家の中に入り込んだ。

2時間番組の「激突! 霊能力対戦」は中ほどといったところだろうか。
あまり時間が経っていないような気がしたが、始まってからもう1時間。
時計の針は、7時半になろうとしていた。
「うぅ……この中から選べって言われてもなぁ……」
霊能力を信じない春佑には、どれも胡散臭い人間に見えてしょうがない。
「この人たちはどんな人たちなの?」
クラーメルが興味深々に聞いてくる。
「あぁ、この人たちは幽霊が見えるとか前世が見えるとか言ってる人たちだよ。僕は全然信用してないけどね」
「へぇ。じゃあ、シュンスケもテレビに出れるんじゃない?」
はぁ?という顔で春佑はクラーメルの顔を覗く。
「だってさ、シュンスケだって私が見えているわけでしょ? だったら霊能力者じゃん♪」
「いや、だから特別な人だから……」
「別に霊が見える人が特別だと思わないんだけどなぁ……」
春佑もそう思っているのだが、そんなことを言ったところで意味が無い。
とりあえず、友人裕樹の"宿題"を片付けることが先決だ。
「うーん、やっぱりこの太木先生かなぁ。なんとなく説得力ある気がするし」
「シュンスケ、この人は?」
クラーメルがとある人物を指し示す。
赤を基調とした、七福神の誰かを思い浮かばせる服装。
体型はややぽっちゃりであり、怪しい笑みを浮かべている。
「あぁ、あれは<ruby><rb>南宗斉雷雲</rb><rp>(</rp><rt>なんしゅうさい らいうん</rt><rp>)</rp></ruby>先生だよ。けちな上にろくなことを言わないで有名な……」
よくテレビ番組に出る人物であるため、オカルトに興味がないものでもよく知っている人物だ。
最近春佑が見たのはお笑い番組だっただろうか。
「……こいつ……」
クラーメルがつぶやいた瞬間、玄関の呼び鈴が鳴った。
「お客さんだ。ちょっと待ってて」
「いえ、私もついていきます」
「だったら話しかけるなよ。俺にしか見えないんだろ?」
そういうと春佑は玄関へ向かった。

「ただいま~」
玄関にいたのは予想に反して姉の久美だった。
「おかえり」
「おかえりなさい、クミ」
しゃべるなと言っていたクラーメルがしゃべったため、思わず春佑はクラーメルの顔を見た。
「え……あ、あぁ、春佑にも見えたのね」
春佑が予想だにしなかった言葉を、久美は話した。
「え?」
「なんだ、見えていたのならもう気を使わなくてもいいわね」
何も無かったように久美は家に上がった。
「なんか残業の予定だったんだけど、上司の人がやってくれるんだって。やっぱり美人は得よね~」
なんだかニコニコしながら、やたら下げている買い物袋が気になる。
が、それ以上に久美にクラーメルが見えていることが気になる。
「ね、姉ちゃん、クラーメルがみえるの?」
「ええ、1年前くらいから。けど春佑が見えないから、クラーメルちゃん、嘆いていたわよ?」
そういえば姉は霊感が強いのだった。見えていても不思議ではない。
「シュンスケ、どうしたの?」
何がなんだかわからないといった表情の春佑を尻目に、久美は食事の準備を始めた。
とは言っても、あらかじめ作っていたものがあるため、それを暖めなおすだけなのだが。

「クラーメルちゃん、ずっと春佑のことを護ってるんだってね」
暖かいシチューをすすりながら、春佑にクラーメルの姿が見えるまでの経緯について久美が話した。
「……で、クラーメルは食べないのか?」
「私幽霊だから、食事はとらないの。でもこうやって見ていると……」
クラーメルからよだれのようなものがたれた。ように見えた。
「食べればいいじゃないか」
「食べたくても食べられないのですぅ。むぅ……」
確かに現世にあるものは通り抜けてしまうため、食べることはできない。
一応触ろうとする意思があれば食べれないことはないが、味もしないし、エネルギーにもならないため、なんら意味を成さない。
「で、これからどうするの?春佑」
久美が尋ねた。
「何が?」
「だってこれからはクラーメルちゃんと一緒にいるわけでしょ?てことは二人っきりで……きゃー!」
何を妄想し始めたのか、久美は一人で騒ぎ始めた。
「……べつに守護霊なんだから、異性だからって妙なことはしないのだが……」
「妙なことって? 妙なことって?」
やたら食いつく久美。クラーメルは何のことかさっぱり、といった表情だ。
「私は<ruby><rb>守護霊</rb><rp>(</rp><rt>ガーディニアス</rt><rp>)</rp></ruby>だからといっていつも<ruby><rb>守護対象</rb><rp>(</rp><rt>ガルダー</rt><rp>)</rp></ruby>のそばにいるわけではないですよ。夜中は周囲の巡回をしてますから」
「え~、つまんないなぁ」
「妙なこと」を期待していた久美はなんだかがっかりした表情を浮かべた。

食事を終え、春佑は部屋でクラーメルに今の自分の立場について訊ねた。
「何で僕を護っているわけ?」
普通の人でも疑問に思うだろうことを聞いてみた。
「最近生命エネルギーのバランスがおかしいと思ってね。それでシュンスケを狙ってくる奴を追っ払ってみてるの」
「何故僕なんだ?」
「それはとりあえず"気まぐれ"ってことにしておいてちょうだい」
なんだか軽く流された気がするが、それは気にしないでおこうと思った。深くつっこんでもどうせしゃべってくれないだろうと思ったからだ。
「気になってるんだけど、"生命エネルギー"っていうのは?」
「現世にいる霊―不成仏霊はいろんなものからエネルギーを得て現世にとどまっているの。そのもらっているエネルギーが生命エネルギーっていうわけ。生命エネルギーは生き物が生きるために必要なエネルギーのことよ。人間は本来200歳まで生きられるらしいんだけど、不成仏霊が生命エネルギーを奪っているから、寿命がだいたい70歳くらいになるの」
「不成仏霊って、そんなにエネルギーをとってるのか?」
「人間の人口ほどじゃないけど、結構不成仏霊もいるからね。ただ、人間からもらっている寿命は、1日で2日分、といったとこかしら」
つまり不成仏霊が1日生きるためには、人間が2日生きられる生命エネルギーが必要、ということである。
「あ、でも生き物だって食事することでエネルギーを回復してるじゃないか」
「それは活動エネルギー。生命エネルギーとは別ものよ。活動エネルギーは文字通り動くためのエネルギー。両方ないと、生き物は活動できないわけね」
生命エネルギーは、車でたとえるとエンジンなどのパーツであり、活動エネルギーはガソリンといったところだろうか。
車はガソリンで動くが、ガソリンが無くなれば動かない。
また、使うたびにエンジンなどのパーツも傷んでいく。そして、それらが使えないレベルまで達してしまうと、いくらガソリンを入れても動かなくなる。
それが、人間ら生き物も同じだということだ。
「なるほど。ところで、生命エネルギーのバランスがおかしいって言うのは?」
「生命エネルギーにも正のエネルギーと負のエネルギーがあるの。不成仏霊は普通それらをバランスよくとっているのだけど、たとえば一人の人間から正のエネルギーを、別の人間から負のエネルギーを奪うと、人間のエネルギーが偏ってしまうの。それが事故の原因になってしまうの」
「事故の?」
「そう。磁石の原理と一緒。生命エネルギーっていうのは創造物にもあるの。だから人間が正のエネルギー、車なんかが負のエネルギーに偏ると、それらが引き合って事故になる、っていうわけ」
事故が多い年はそういった不成仏霊が多いためである。
事故多発地帯では、そういった変わったエネルギー摂取の仕方をする不成仏霊が固まっているからだとか。
「でも、それだと極端にはバランスは崩れないはずだよね」
「そう。でも、どこかの馬鹿が負のエネルギーばかり集めてるらしいのよ。だからやたら正のエネルギーが強くてね」
普段はこんなことをしても、偏ったエネルギーで自滅してしまうために意味が無い、とクラーメルは言う。
が、それでも何かの目的のために、「偏ったエネルギー」を回収している霊がいるらしい。
「ともかく、そいつらを止めないとエネルギーバランスが崩れて大変なことになるかもしれないの。協力してくれるわよね」
「わかった。で、何をすればいい?」
「とりあえず普通に生活していればいいわ。何かあったら協力を頼むから」
そういって、クラーメルは外に出て行った。時刻はもう夜の11時だった。
「ちょっと見回りに行ってくる。シュンスケは宿題が済んだらもう寝なさいよ。朝早いんだから」
「あ……」
宿題の存在を言われ、春佑はあわてて宿題をやり始めた。</font>

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テーマ:落書き投稿日時:2007/01/03 03:06
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