こんにちは。米原です。
今週「も」大変でした。
まぁ、決算月ですからねぇ……。
あぁ、28日まで仕事で、29日からコミケとは。
体力が持つか、心配です。
と言うわけで、23日、24日は休息に当てましたが……。
今頃休んだって、22日のミア誕生日は帰ってこないんですよ。
許して、ミア……。
さて、今日は12月24日です。
世間ではクリスチャンでもないのに、お祝いをしているそうです。
よくわからん……。
とりあえず、米原も千莉ちゃんと一緒に、お祝いだ!
と言うわけで一本!
大図書館の羊飼い 御園 千莉 SS Silent night holy night
~12月24日~
「がや……がや……」
休日だというのに、校舎には人が多い。
正確には、校舎内のコンサートホールが、という表現が正しいのだが。
「先輩……すごい人ですね……」
「うん……」
正直、つぐみや玉藻の力をもってしても、こんなに人を集めることは出来ないと思っていたのだが、これには驚いた。
「立見席まで出てますよ……」
さすがの千莉ちゃんも、これだけの人を前にすると、緊張するのだろう。
しきりに、この控え室から外を確認している。
「さて、そろそろ準備を始めようか」
「はい」
「まず、声出しからだね」
俺は、いつも声出しに使っているCDを探し出し、セットする。
「あ、今日はボイストレーニングしてきているので、結構です」
「あ……そうなんだ」
「ということで、アカペラで聞いてください」
千莉ちゃんが目をつぶる。
あたりがシーンとなる。
「いきます」
目を見開いた千莉ちゃんは歌い始めた。
「I'll say goodbye to love. No one ever cared if I should live or die」
「ちょ、ちょっと、千莉ちゃん」
「Time and time again the chance for love has passed me by and all I know of love is how to live without it」
「ス、ストップストップ!」
「I just can't seem to find it」
驚いた俺は、マイクのスイッチを切る。
さすがに千莉ちゃんも気がついたようだ。
「千莉ちゃん、歌が違うよ……」
「知ってます」
「じゃぁ、なんで……」
「ちょっと……歌ってみたかったんです」
「歌ってみたかった?この歌を?」
「えぇ」
千莉ちゃんは観念したのか、ちゃんと今回の発表曲の歌詞の束をかばんから取り出した。
「先輩も知っていますよね、さっきの曲」
「あぁ、有名な、海外の曲だよね」
「日本では、『愛にさよならを』というタイトルになっています」
「そう……だね」
「私は、不思議なんです。なぜこの曲が、『恋にさよなら』ではないのか」
「あ……」
この曲は、若い女性が、愛を手に入れられずに、あきらめると言う内容の歌。
普通この場合の『愛』は、男女の仲という意味と取れる。
『何度も愛するチャンスが素通りしていった』という部分からも、それがわかる。
良い人を見つけたのに、モタモタしているうちに取られてしまったとか、うまくいきそうになる手前で振られたとか、そういうことだろう。
でも、こういうのは、日本では『恋』という言葉で表現するのではないのだろうか。
「先輩もすでに気がついているように、この曲は女性が恋愛について歌う歌です。ま、恋している相手が誰だかはわかりませんが」
「うん……」
「だったらなぜ、『Love』という英語を『愛』と表現したのか。疑問が出てきます」
「もしかして、直訳だから?」
「そうかもしれませんが、私は、『愛』があっていると思います。なぜなら、多分この『愛』の相手は、恋人とも、家族とも取れるからです」
「あ……」
日本では、『愛』というのを、すぐに男女の仲と取ってしまう風潮がある。
現に、『愛』を深めるクリスマスは、欧米では家族との時間であるのに、日本では恋人との時間に摩り替わっている。
「家族にも、恋人にも愛されない自分は、愛を捨てる……そんな歌なのだと私は思っています」
「うーん、なかなか奥深いねぇ」
「えぇ。歌の魅力と言うのは、なかなか難しいものですよ」
千莉ちゃんがにっこりと笑う。
「さて、そんなクリスマス・イブ。私の恋人はどうやって私を愛してくれるのでしょう」
「え?」
「このコンサートが終わったら、きっと私の身長ぐらいある大きなケーキと、たっくさんのプレゼントで、私に愛を見せてくれるんですよね?」
「あ、あはははは……それは、お楽しみと言うことで」
「期待していますね」
千莉ちゃんはそれだけ言うと、自らピアノのそばに行き、音程練習を始めた。
「あー」
「あー」
「あー」
まずは、高い音と低い音を交互に出す練習から始める。
その後、ピアノの音程と同じ音を出し始めた。
それ専用のCDもあるのに、自らピアノを叩くというところを見る限り、それなりに緊張しているのだろう。
「ふぅ」
ため息をひとつつくと、俺は腰を下ろした。
そして、先ほどの千莉ちゃんの言葉を思い出す。
「『愛』の相手は、恋人とも、家族とも取れるからです」
千莉ちゃんは、あまり家族に愛されていなかったと言う。
音楽の道に進むことを強制されて生きてきた彼女。
きっと、さっきの歌も、そんなことを俺にアピールしたかったのだろう。
「先輩、練習用のCD、かけてもらっても良いですか?」
「あぁ」
CDを入れ、機材のスイッチを入れる。
この曲は、千莉ちゃんが歌いやすくて好きだと言っている曲で、よく練習に使っている。
「♪~」
曲を歌い始める千莉ちゃん。
たとえ家族に愛されていなくても、たとえ一人であったとしても、俺が絶対に『愛』を与える。
そんな想いを頭に浮かべながら、俺は練習曲を聴いた。
曲が終わる。
「先輩、本番の曲、お願いします」
「ほい、了解」
CDを入れ替える。
「いくよー」
「お願いします」
音楽が始まり、千莉ちゃんが歌い始める。
Silent night, Holy night.
All is calm, All is bright.
‘Round yon Virgin,Mother and Child,
Holy infant so tender and mild.
Sleep in heavenly peace.
Sleep in heavenly peace.
Silent night, holy night.
Shepherds quake at the sight.
Glories stream from heaven afar,
Heavenly hosts sing Alleluia.
Christ the Savior is born.
Christ the Savior is born.
Silent night, holy night.
Son of God love's pure light.
Radiant beams from Thy holy face.
With dawn of redeeming grace.
Jesus Lord, at Thy birth
Jesus Lord, at Thy birth.
たったこれだけの歌。
語数は、少ない。
だが、この3分ほどの長さにこめられた想いは、ものすごく深い意味があると思う。
「……これを聞いた生徒が、さっきの『愛にさよならを』にならないように、なってほしいですね」
「え?」
「……何でもありません。では、本番に行きましょう!」
千莉ちゃんは満足そうな顔で、ステージへと向かっていった。
「千莉ちゃーん。すっごかったよ。本当にすっごかったよ」
千莉ちゃんのステージが終わり、控え室に戻ると、つぐみが飛んできた。
そして、こうなった。
「わたしね、わたしね、すっごく感動したの。あんなに上手な『きよしこの夜』が聞けるなんて本当に幸せですっ!」
千莉ちゃんの手を握り、興奮のあまり、ぶんぶんと上下にゆする。
ちょっと折れたりしないか心配になるほどだった。
「ありがとうございます、つぐみ先輩」
「いやー、もう、すごかったもーん。ね、そうだよね、玉藻ちゃん?」
「あぁ。学園のみんなが楽しめるものだった」
「図書部の一員として、しっかりと皆様を楽しませることが出来て、私もうれしいです」
優等生のような発言をする千莉ちゃん。
この笑顔を、俺は守りたくてしょうがなかった。
その後、図書部でドンちゃん騒ぎ。
たびたび思うのだが、なぜこれだけやって怒られないのか、不思議である。
ふと、騒いでいる中、千莉ちゃんが声をかけてきた。
「先輩」
「ん?」
「私、この部に入ってよかったです。いろいろな人が愛してくれますから」
「多分、つぐみも玉藻も、そう思っているよ」
「でも、先輩、日本では、聖なる夜を、男女二人っきりで過ごすものです。この後、期待していますので、よろしくお願いいたします」
それだけ言うと、千莉ちゃんはドンちゃん騒ぎの中に入っていった。
もちろん、この後のことは考えている。
プレゼントもあるし、その後のことも、準備万端だ。
その前に、俺は一言だけつぶやくことにした。
「最高のプレゼントを、ありがとう」
ドンちゃん騒ぎしていて楽しそうな千莉ちゃんの笑顔は、俺にとっては何にも代えがたい、最高のプレゼントであった。
END
いかがだったでしょうか。
多少、めちゃくちゃなのは、カンベン。
クサくなるので、一言だけ。
人は、愛されないと生きていけません。
さて、その『愛』とは何か、この夜に少しだけ、考えてみては?
米原
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テーマ:日記 | 投稿日時:2011/12/24 23:17 | |
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