多重構造世界 ~TCG~

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暇つぶし用 しょーと、ショート、しょ~と 小話を100ほど

12/04/03
100
『赤蠍のウォームライダー』
「さぁ、遠慮せずに乗ってくれ」
 彼は爽やかに言う。愛馬、いや…愛砂蟲の背に乗れと
「え、あ、その~」
 正直、触るのに抵抗が…躊躇してると先輩が彼に問う
「これ、移動する時、砂潜るんじゃないの?」
「潜るとも!」
「「死ぬわ!!」」 
 埋めがたき種の差


12/04/04
101
『トロール爆走戦車兵』 
 街道を馬車で逃げるゴブリンの強盗団を捕える為、先輩は馬上から召喚を行った。現れたのはブルタスクが牽く戦車に乗ったトロール。彼は召喚に躊躇う素振りも無く、見かけによらない速度で一団に追いつくと、長柄の朝星棒を連中に叩きつけた

102
『ゴブリン暴走戦車団』
 しかし、賊の一人が暴風のようなその一撃を手にした剣で受け流す。予想だにしなかったのだろう、トロールは大きく体勢を崩した。その隙へ跳躍し、あろうことか彼を蹴り落として賊は戦車を奪ったのだった。馬車から次々と戦車へ飛び移る彼ら。そして戦車は反転し…
「足止めはした」
「反撃されてますけどね!」


12/04/05
103
『アヌビスの槍士』
 砂漠のオアシスで、久々のお洗濯。しかし周囲に背の高い樹木が無く、どうしようかと思っていたところ、先輩が槍を持ったアヌビスを召喚
「乾くまでその槍横に担いで立ってて」
「それは酷いでしょう…」
 すると当の彼が口を開いた
「まったく、…ヤリヤリだぜ」
 遠慮なく物干し竿になってもらった


12/04/06
104
『百戦王クローヴィス』
 現れた人馬族の男性の名乗りに先輩が驚愕する
「クローヴィス!それは卓袱台返しの達人の名っ。磨き続けた技術と筋肉は、大地をも返す超絶技巧に至ったとか。芸も極めればなんとやらの先達者!」
「あながち間違っとらんなぁ」
 先輩のあんまりな説明に大笑してみせる懐の広さ


12/04/09
105
『アネモネボトム』
 突如船上に現れた「通りすがり」のスキュラが、態度の悪い成金おやじに粘着質の液体を噴きつける。
呆気にとられる皆に、彼女は片手を上げて挨拶すると船べりから海へ飛び込み、去った
「わ、わしの宝石がぁ」
 悪趣味な程に身に着けていた貴金属が錆び、くすみ、目に見えて輝きを失う様に、彼は嘆き崩れ落ちる
「ひひ」
 船酔いでぐったりした先輩が小さく笑った


12/04/10
106
『ガネーシャの象騎兵』
 街道で象族の騎兵に追い抜かれた。
 小さくなる後ろ姿が、突然地面にめり込む。
 何事かと見れば、道脇から小鬼の集団が躍り出て騎兵へと襲いかかった。
 しかし騎兵は砂を巻き上げながら陥穽を飛び出し、その勢いで彼らを蹴散らす。
 どうやら砂衣の呪文で衝撃を和らげつつ、砂を足場にしたらしい


12/04/11
107
『リトル・ジャイアント』
 頁を繰る先輩が溜息を吐いた
「なんです?」
「んー、今年の『小巨人画集(人間版)』なんだけど」
 そんな本が存在する事にまずびっくりだよ。年刊?年刊なの?
「少年が逞しくなる喜びと残酷さを思い知らされて…、時の流れは無情よね」
 ああ、ストライクゾーンの問題か


12/04/12
108
『クローヴィスの新兵』
 訪れたケンタウロスの集落で、子供達の訓練の様子を見学させてもらった
「うわ、あの子呪文使いましたよっ。まだ小さいのに」
「将来が楽しみねぇ」
 相鎚を打とうとして横をみると、陶然と頬を染める犯罪者がいた
「後、三年くらいでいい鎖骨に」
 やばい、見てるものが違う


12/04/13
109
『火吹山の乙女ペレ』
「炎ような情熱と清純なる知性の輝きを抱く者に加護を与えるという、山の精霊ね」
「へぇ…そんな風には見えませんけど…」
「ど、どこ見て言ってるのかな?」
 その無駄に膨らんだものですよ。何か?
「気にしないで。時々、劣等感抱くらしいの」
 先輩だってそんな大きくないじゃんっ


12/04/16
110
『ヴァンパイア』
「我は吸血などという前時代的な行為を必要とはせぬ。墓地で茶会に興じれば充分に糧は得られる故」
 吸血鬼退治の依頼を受けて訪れた私達に、当の彼はお茶を勧めてそう言った
「美味しいお茶を淹れる人に悪い人は居ないしね」
 と先輩は頷くが、それ先輩が既に例外の理論だからなぁ


12/04/18
111
『ムーンシャイン・パピヨン』
 月光満ちる森中の空を、多色の硝子を組み合わせたかの様な羽をもつ怪物が緩緩と飛翔する。
 僅かな羽ばたきが青白い鱗粉を落とした。
 その淡い輝きは、月夜に降る雪を想わせる。
 しかし、美しいそれに触れた生命は爛れ、枯れ、己の輝きを失っていくのだった。

112
『スライム』
 私が召喚したオーガの一撃をものともせず、それどころか逆に、軟体生物はオーガを飲み込んでしまう
「…私この光景見た事あるわぁ」
 溶かされていくオーガを見ながらの先輩の一言
「奇遇ですね、私にも覚えがあります…」
 おかしい、前回を踏まえて拳に自信のある蛮兵さんを呼んだ筈なのに


12/04/23
113
『リンドブルム』
 魔竜を容易く退け迫るミキストリ。慌てて私は次の召喚を行った。
 応えて現れたのは翼竜リンドブルム。その大羽を広げ羽ばたかせると荒天神の纏う風が乱れ、彼は歩みを止めた。
 しかし、再び荒天神はじりじりと進み出す。その様子に先輩が緊張感無く言った
「代償勝負ね」
「それを言うなら、体力勝負」

114
『グレート・モンブラン』
「魔法帝国時代の神聖生物、六王国時代の魔法生物、そしてソラステルで奨められてる錬金生物の研究でも熊型の発案があるとか」
「どんだけ熊好きなんですか研究者」
「でもいつの時代も発案されるだけで何故か失敗に終わってるのよね。大剣持った女が破壊しに来るとかいう都市伝説」

115
『大砂蟲』
「ふっふっふ」
「…何よ気持ち悪いわね」
「以前召べなかった大砂蟲の召喚に成功しましたからね。道にしか来ないとかやっぱり個体差ですよ」
「いいけど、その砂蟲が街道の方へ向ってるけどいいの?」
「え?きゃぁっ!?」
 慌てて送還する

116
『金冠の悪魔ゴモリー』
「いっち、にっ、いっち、に」
「…何やってんの?」
「今、巷で効果抜群と人気の『ゴモリー女史の地獄のダイエット:ダンシング編』を試してるんです。先輩もどうですか?」
「ん~、私何食べても太った事無いからいいや」
「へぇ…」
「な、何でそんな怖い顔するの」

117
『黄金のヴァンブレイズ』
 片腕にだけヴァンブレイズを付けた冒険者らしき女性とすれ違い、先輩が何か「思いついて」言った
「ああいうの何で片腕にだけ装備するか知ってる?」
「お金無いからじゃないですか?」
「君も大概だよね…んとね、腕甲だけに1買う(ワンコウ)てんからやで!」
「2点」
「…五段階評価でお願いします」


12/05/07
118
『ゴールデン・ゴーレム』
 雨天に足を止められた宿の一室。
 視界の端で先輩がジオラマを作っている。主役は黄金像のようだ。
 何度も改良が行われたその魔法生物は汎用性と拡張性の調和、出力の向上を成したと先日発表されたばかりだが、一部マニア向けにすぐ、模型が発売された。先輩が弄んでいるのがそれだ

119
『黄金樹の勇者』
「で、それがどうして路地裏にコルセット着けて立つことになるんですか?」
 妙に凝った背景に、艶めかしい腰のくびれを成形された下着姿の黄金像…意味がわからない
「伝説の再現」
 先輩は賞賛を求める童子の声で、得意気に応えた


12/05/14  
120 
『ゴブリン盗賊団』
 ドロシー、ドロシー、盗賊姫♪
 昨日はあちらのお邸の、赤い宝石欲しがった♪
 器用でひ弱な小鬼を引き連れドロシーは、赤い宝石盗りに行く
 だけど見つかりドロシーは小鬼を一人投げつけ逃げた♪
 夕暮れ時の窓の外から童歌が聞こえてくる。器用な手下を失った盗賊姫は次の邸で二人、次で三人と手下をより多く失っていく。そんな内容だ


121
『ベルゼブブの使徒』
 ゴモリー女史の地獄のダイエットは素晴らしいよ。彼女の言うように一日少しシェイクアップダンスを踊るだけで、太と目だったお腹(レベル)がみるみる引き締まったんだから。もうひ弱だなんて言わせないさ!ーとある蠅の王の僕よりー
「ほら他にも絶賛の体験談が一杯。絶対効果ありますよ!」
「君は時々お馬鹿さんだな」

122
『オーガの炎踏使』
 恩師との酒の席で、彼女の種の特異な婚姻の作法がツマミになった。何でも女が男を炎で炙って試すのだとか
「そんなんで、よくもまぁ種が絶えませんね」
「プルート系の血筋って超勝ち組じゃん」
「でも連中馬鹿だからなぁ」
 頑強さだけが問われる訳でも無いらしい

123 
『盗賊姫ドロシー』
 ドロシー、ドロシー、盗賊姫♪
 手下の小鬼を見捨てて逃げた♪
 ドロシー、ドロシー、小鬼のお姫♪
 ある日気付けばお姫様、宝の山にぽつんとひとり♪
 千の宝石、万の金貨の輝きもドロシーとお喋りしてくれない♪
「この唄、放浪王だと過激だからって今の詞になったのよねぇ。馬鹿みたい」
「手下全部食べちゃうんですよね。懐かしい」

124 
『アヌビスの亡霊騎士』
 死霊の様に佇むアヌビスの騎士から発した淀んだ黒い靄が槍を持ったアヌビスを包むと、疲労していた彼は活力を取り戻し、再び大地にしっかと立った
「これで服が乾く迄大丈夫でしょう」
「でも、お日様が遮られてるような」
 はっとした顔で私を見る三人。アヌビスの人達はこういう使われ方に不満は無いのだろうか


12/05/16
125
『ゴールデン・アイドル』
 金色のサーベルをふりふり、人形のような魔法生物が近付いてくる
「可っ愛い~」
「そっかなー、なんかちょっと怖いけど」
 先輩には不評のようだ
 足を止めた魔法生物がサーベルを天にかざして叫んだ
「来い、Gツヴァイ!!」
 細い光が空を切り裂く。裂かれた空間から黄金の光が溢れ、その根源だろう金色の巨像がゆっくりとその姿を現した
「僕とツヴァイが悪を討つ!」
「格好良いッ!」
 今度は先輩が喜ぶが…何この展開…あれ?悪って私たち?何故にっ!?


12/05/17 
126
『エレファントノーズ』
「タチ専用スキュラだけど食指が動かないわね。ネコ以外は」
「…落ちはあんまり聞きたくないんで黙ってていいですよ」
「棒はあっても玉が無いから」
「思いっきり下ネタなのに、妙に知識が必要なんで反応に困りますね」
「…魚類の精巣の食材名を‘タチ’っていって、それをレ」
「ネタの解説は優雅じゃないですよ」
 象(エレファント)だけに


12/05/22
127
『鋼玉蟹フロックハート』
 逆らうブルタクスを巧みにいなし、此方へと迫る奪われた戦車。一転して逃げる私たちだったが、二人乗りで走って来た疲労からか馬の脚が伸びない。背後で先輩が再び召喚を試みる。ちら、と後方を見やると現れたのは鋼鉄の塊の如き巨大な玉蟹だった「しまった、距離が近い」

128
『オーロラ・カーテン』 
 目論見としては蟹を戦車の直前に召喚、衝突による横転を狙っていたのだろう。しかし結構な距離が目標との間に開いてしまった。当然、ゴブリン達は巨蟹をかわす軌道をとる。すると蟹の周囲に虹色の輝きが溢れ、彼らの視界を塞いだ。その機に蟹は文字通りの蟹歩きで戦車へ激突する

129
『放浪の勇者ブリキン』
 甲殻の形状に乗り上げる容で、戦車が宙を俟った。墜ちるそれから人影が一つ跳躍する。着地の勢いを殺す為に地面に手にした剣を突き立て、次の動作に支障ない体勢でそいつが着地すると、数俊遅れて戦車と諸々も破壊の音立て落着した
「あの人、ほんとにゴブリンなんですかね」


12/05/23
130 
『黒怨姫ネフティス』
「アヌビス王の娘は嫉妬深く、ネチネチした悪巧みが大好きだったけれどよく失敗していたそうよ」
「先輩好みの萌えキャラですね。金髪縦ロール似合いそうな」
「…言われてみるとその通りねっ。おかしい、何か酷い逸話や能力持ちだった気がするんだけど可愛く思えてきた。ワンコラブっ」

131
『コーラル・ドラゴン』
「珊瑚の竜の前で、アンラックを唱え、生きて帰ってくる。何時の頃からか、この島で行われている伝統的な度胸試しなのじゃ。ワシもそれで婆さんのはぁとをゲッチュしてな、ひょほほ」
「こういうとんでも行事って行政が介入するべきじゃないかと」
「いんじゃないかな面白いし」
 古竜の方だと確実に死んじゃうんですが


12/05/24
132 
『ゴースト』 
 私の唱えた風刃が亡霊を切り裂いた。先輩が疲労を感じる声音でぼやく
「…堅ぇわ、お札効かないわ、呪文は唱えるわ、最近の霊はアグレッシブに過ぎるよね?」
「どうします?復活する可能性もありますけど」
「こないだ出なかったし。もう相手するの嫌だし!大丈夫だよあんだけ存在感あったら復活とか出来ないよ!」
 理解は出来なくとも同意はしたいご意見


12/05/28
133
『アルカナ・ウィスプ』
「昔これをびっくり箱に入れた商品があってさ」
「…危なくないんですかそれ」
「うん、人死にが出て販売中止になった。その後すぐ、シャドウ・ウィスプ入れたバージョン売ってたけど」
「えー」
「や、今度はちゃんとトト族専用って注意書があったんだけどね」
「駄目でしょう」

134
『赤蠍のスナイパー』
「彼らは弓兵だよ。毒の生成も得意なんだ」
「あの、矢尻じゃなくて他人の体に何やら塗付けてるんですが…あ、そうか、薬も作るんですね」
「彼らが得意なのは興奮毒だからね。矢に塗ったら相手がハッスルしちゃうよ」
…きっと戦いに毒物を使ったら卑怯とかそういう倫理観があるんだろう

135 
『紅蠍のニードルメイジ』  
「彼らは呪術師で、敵陣に毒をばら撒くのが得意なんだ。素敵だよね」
 倫理観とかまったく関係無かった
「その毒、矢にも塗りましょうよ?」
「えー、でも彼ら体は丈夫だけど、弓の腕はいまいちだからなぁ」
スナイパーという職業について議論の必要があるようで

136 
『蛇蝎王パピルサグ』
「歴代の王となった方々は自ら先頭に立ち戦う猛者ばかり。けれど現在の王は後方に座す事を恥とも思わない臆病者でね。皆から嫌われているんだ。戦と政に長けてるのは認めるけどね」
「ちなみに以前の王様の任期はどれほど…」
「戦の度に代わっていたよ。まさしく勇者の振舞さ!」
 現王の苦労が垣間見えた


12/05/30
137
『クラウド・ホエイル』
「あ、食用クジラが飛んでいる」
「食用…です?」
「だって、『喰らうど、ホエイル』っていうじゃない」
 瞬間、辺りが輝きに包まれた
「大変だ!女の人がクジラに十字聖火落とされたぞ!」
 周囲が騒がしくなる中、私はクジラって耳がよいのだなぁ、と一人関心していた

138
『ゴブリン路上偵察団』
 街道でおかしな小鬼のグループとすれ違った。望遠鏡を逆さまに覗いたり、ぼおっとただお菓子をつまんでいたり、耳を地面に押し付けて何か聞きとっている風であったり。あまりに堂々としているので
「測量屋さんか何かですかね?」
「盗賊の斥候とかじゃないかな」
「へぇ…え?」


12/06/04
139
『冥界の貴公子ベルゼブブ』
「蟲を食べると逞しい体になれるとか」
「どれだけ体に良いと言われても昆虫は遠慮したいですねー」
「更に食べた分だけ強力な波動を放てるとか」
「吐いちゃうくらいなら無理して食べなくても(苦笑」
「なるほど、それは封印される筈だわ」
 …てっきり、健康食か何かの話かと

140
『海牙王ラムゼイ』
「あの群れに近付いちゃ駄目よ」
 遠くに見える海生哺乳類の群れを示し、先輩が忠告する
「のんびりしてそうですけど」
「外敵が近付くと普段の動作とは比べ物にならないくらい機敏に反応するわよ、相手が多ければ多いほどね。昔、毛皮目当てに海賊が狩ろうとしたら、手を出す前に逆に襲われて全滅しちゃったって」
「わぉ」

141
『バーバリアン・ブラッド』
 宴も酣、というか飲み過ぎではないかと
「ぶははは、鬼族に伝わる呪文で体力倍増!つまり酒も倍飲めるってことさね!問題な~しっ」
「にはは、私にも~私にもかけて~」
「おうおう」
 …オーガ以外にも効果あるんでしょうか、それ以前に酔いを促進するような気もするなぁ


12/06/05
142
『オドントティラヌス』
 暴風雨の中、逆巻く波から時折巨体を見せる大怪魚。その威容を宿の窓辺から眺める私たち
「港は浅くて近寄れないんでしょうか」
「入ってこれても、この嵐じゃ餌になるようなもの船に乗ってないと思うけどね」
 そうした物見高い輩は我々だけではなく、滅多に見れない光景を多少濡れつつも、人々は歓声挙げて娯楽としていた
「嵐が過ぎても居座ってたらどうするんでしょ」
「さぁ?」


12/06/07
143 
『マリッド』
「海棲みの精霊ってもうちょっとこう、控えめな存在じゃなかったけ」
「さぁ、初めて見るので」
「や、昔も控えめとは言い難かったけど…すくなくともまっぱじゃなかったし、空も飛ばなかったし、…なんというか…いきなり丸見えは嬉しい中に物足りなさを覚えると言うか」
「知らんがな」

144
『プレーグ・アウル』
 呪いを運ぶ梟が頭上を飛び交う
「魔術的な品種改良とかありえないわ。動物愛護団体にタレこまないと」
「…召喚術師の言えることじゃないような。ってこないだ面白がって似たようなの作ったじゃないですか」
「あれはほら、スピリットだから」


12/06/08
145
『宵闇の伯爵ジルベール』
「はげしい思い、慈しみ、ジルベール、おまえを…愛している」
「だめだ…誘うのは、誘うのはやめろ!」
 伯爵の求魂の波動が吸血鬼を包み込む。しかし魂無き眷族の加護により吸血鬼はそれに耐えきった
「…あの二人親子って言ってませんでしたっけ?」
 父息子の会話にして不穏な…


12/06/25
146
『女海賊ネイ&ネル』
「海賊は船上で生き、船上で死ぬもの」
 って偉い人が言ったから、船乗りの召喚札にはもれなく『艦船』が盛り込まれるようになったとかなんとか
「なんとかじゃないわよ!」
 丘の上に「座礁」した船の上から二人の黒エルフが私たちに向かって叫ぶ
「まさか船ごと召喚されるとはねー」
「びっくりですよねー」


12/06/26 
147
『巨神王バロール』
「一説に由るとガリュンバーの瞳は巨神王の邪眼を模して造られたとか」
 先輩がぽつりと誰に聞かせる風でも無く言った台詞に
「…まったく再現出来てませんね」
 私は平野に並び立つ兵士の石像の群れを眺めて応えた
 像の間を駆け抜けた風が私の体を撫で、その冷たさに震える


12/06/27
148
『フライング・エストック』
「『ジャベリン・ザ・エストック』って技があってさー」
「…槍なんだか剣なんだかはっきりしてくださいよ」
「フライング・エストックって、常に高速で泳いでるのね。泳がないと死んじゃうから。でね、熟練した召喚術師はその慣性を殺さずに飛魚を召喚することで竜さえ貫く凶器にするのよ。複数同時召喚の奥義もあるの」
「予想外に凶悪だった!」

149
『エコー』
「古の水の召喚術師『エコー』は、軍隊を相手に数多のF・エストックを召喚してそれを殲滅したって話よ。『剣魚千召』と名付けられたその奥義は残念ながら禁じられて今に伝わってないけど」
「一応聞いときますけど何でです?」
「腐った魚類の匂いで数十年に渡って土地が使えなくなったの」
「…あの時代の人ならありえそうって思っちゃうのは失礼ですかね」


12/06/29
150
『海皇竜カドモス 』
「粗大ごみをカドモスに食べさせて、発生した雷を研究施設のエネルギーとして使おうという、自然に優しい計画があったんだけど」
「身の程を知らない人もいたもんですねー」
「交渉というより捕獲しに行った連中が『ゴミじゃ無理』って本人、いや本竜かな。本竜に慇懃に断られたんだって」
「竜の方が人に優しかった、と」
「結局、一番知性的じゃないのは人間って事よね」


12/07/02
151
『サモン・シップ』
「あー解った。船ごと召喚されちゃったのは、地形が理由みたい」
「ほうほう」
「ここ大昔は環状列石群だったのね。その名残りが私の特性に干渉して今回の事故に」
「痛ましい事件でした」
「もういいから戻してくれないかな」
 黒エルフ達が疲れた声で言う
「…たぶん船の方は無理かなー」
「うぉい」


12/07/03
152
『ギルマンの船乗り』
 黒エルフの片割れが右手を挙げると、半魚人の船員達が不得手な陸上とは思えぬ素早さで先輩と私を取り囲んだ
「如何やら召喚の影響にあるのは私たちだけで、彼らには貴女の支配は及ばないみたいよ?」
 特に示し合わせた様子も無いのに彼女達は状況を理解し此方の逃げ道を断つ様行動した
「海賊の癖に練度高っ」
 先輩が嘆声をもらす


12/07/27
153
『ヘカトンケイル』
 物資輸送の依頼を受け、届けた先は巨人たちの住む地。
 受取人は意外な事に人と違わぬ姿の娘さんだった。
 おどおどとした態度の彼女に品を手渡す。しかし過って落とした拍子に封が破れ、飛び出た中身は本が数冊
『千腕巨人が道具攻め!淫腕なる拡張実験』
 ああ、確かにテクニシャンかも…

154
『巨神姫エスリン』 
 “危うし小巨人~灼熱の髭とアレ~”等々、一見して特殊な内容と解るタイトルの品々
「あ、う、あ」
 真っ赤になって、涙を浮かべてただ喘ぐ少女。気まずい空気の中、先輩が口を開いた
「遅すぎたんだ…腐ってやがる。…巨神だけに」
「その落ち、前にやりましたよ」

155
『フォモール』
「凍える吐息に震える体、絡みつく濡れた黒髪!フォモールさん×父さまの病み攻め!いける!」
「み、身内でさえ、その嗜好(思考)の毒牙に掛けるなんて…エスリン、恐ろしい子」
「同類がいて良かったですね」
「んー、フォモールの人はちょっと病ん入った誘い受けだと思うな」
わっけ解んねー

156
『ジャイアント・フィーバー』
 という訳で、先輩がお姫様に大規模術式の指導をする事になったのだけれども…
「彼らを照らす炎が、内にある官能を高め、より太く硬く逞しくしていく…そう考えれば容易く結果を導ける、貴女なら」
「先生、何だか出来そうな気がしてきました!」
 止めた方が良かった様な気がしないでもない


12/08/20
157
『ギルマンの大砲船』
 海賊船から次々と半魚族が打ち出され、軍船へと突き刺さり、あるいは海の藻屑と化していく
「時々爆発がおこるのは、混ぜると炎上する薬品を詰めた袋を呑んでいるからなのよ!」
「そして何人かはアクア・ファントムとして船を守る霊となる。効率的だろ?」
 黒エルフ達は得意気に言った。おおぅ


12/08/21
158
『強壮ゴブリン』
 巨神の里から旅先の宿へ、先日の礼を認めた手紙と「それ」が届いた。
 手紙によると里の伝統的な食材だということだった。
 この時期が一番油がのっており、滋養強壮に抜群の効果があるらしい。しかし「それ」を前に私達は冷や汗を流し途方に暮れていた
「ぶふふ」
 幸せそうに「それ」は時折笑う

12/08/23
159
『べリアル・べリアル』
「この儀式効果は、一部のマイナー武将マニアによって炎帝ツァンレンのコスプレをする為に造り出されました。素養(火炎耐性)がある者に、若かりし日の炎帝の似姿と加護が付加されます」
「あの、資料にはべリアルを讃える為の儀式が元だって…」
「建前です」
 言いきりましたよこの女


12/09/03
160
『ファラオ・パイソン』
「王家の墓守たちは脳みそすっかすかだから、“ポリモルフ”で死者に化ければ墓の最奥まで辿り着ける筈」
 という先輩の言葉通りに、墓守であるミイラ達は私達に気付かなかった。…後背に迫る大蛇を除いて
「蛇って目で物、見ないからなぁ…旧変身呪文なら、多分いけた!」


12/09/04
161
『ダーナの古竜姫』
「久しぶりに会った怪獣王女が縮んでいた衝撃…おお、よしよし」
先輩が古竜姫の頭を撫でる。先輩の言では古竜姫はダーナの精霊たちの中でも可憐な少女だとの話だったが、これはどちらかというと幼女…
「にゃでるな!ぶれいだぞ!」
 先輩が投げ飛ばされた。可憐でもなかった


12/09/07
162
『ハーピィ風神隊長』
「この子、超が付くスピード狂で、飛び方が荒いから強風に耐性がないと着いても行けないのよ。おかげで部下は皆、竜巻の中を飛行出来る猛者ばかり」
「失礼な、飛べない友軍がいたらちゃんと合わせてます…最近は」
 先輩の紹介に反論する彼女だったが、最後に囁きの様な一言を漏らした


12/09/08
163 
『ダーナの戦巫女』
 先陣を切り駆ける巨大な爬虫類。それを巧みに指揮する活発な少女を見て、先輩が灌漑を込め言った
「昔は“大地の力よ我が守護竜に宿りて、眼前の敵を討ち滅ぼさん”とか何とかイタイ事叫んでたのに止めたのね。成長したもんだ」
 そういうの私達もやりますし?呪文使う時とか

164
『略奪船長アルメハ』
 対抗勢力の撃退に成功し、被害を確認し終わった船長が号令する
「略奪始め!」
 一斉に釣り糸を垂れる船員達。敵艦から奪ないのかと問うと、
「貴様、よくもその様な悪事を思いつけるものだ。奪われる者の気持ちを考えた事があるのか!?」
 怒られました。ちなみに釣果は大漁で、何故か魔法道具が釣れたり…なんでやねん 


12/09/21
165
『スカイ・ワイバーン』
 雷鳴、乱気流をものともせず、嵐の中を翼竜が飛翔する。その荒々しき中の流麗さを誉めてわざとらしく先輩が言う
「見て、ストーム・ドラゴンが飛んで行くわ」
「…あれ違いますからー。解ってて言ってますよね?」
「嵐で落っこちるのに嵐竜とか名前負けだと思うの」

 一応、雷じゃ落ちくなくなったんですよ!  


166
『氷の女王アリエスタ』
 両脇に双子の黒エルフを侍らせた海賊王に氷の女王が迫る
「避けるな、この浮気者~っ!!」
 彼女の平手を白霧を纏って避けた海賊王に、女王は絶対零度の嫉妬の炎を放った
「そこはライトニング・ボルト(電撃属性)よね。常識的に考えて」
「何の常識ですか」


12/09/24
167
『大鋼蟲』
 その日先輩は不貞腐れて一日中寝ていた。先日、長らく絶滅を危惧されていたウォーム種、『大鋼蟲』が僅かだが生存を確認された。当初、希少種の生存を喜んだ先輩だったが、彼の種が突然変異により土地を枯らし成長する害虫へと、変貌を遂げていた事が判ったからだ
「護法陣喰われた…」

身をもって 



12/09/25
168
『真紅の皇帝アギアト』
 墓所の最奥、玉座の間、その主は無数の木乃伊に傅かれ、死を謳歌していた。私達は頷き合い其処へ踏み込む。闖入者に騒然とする中、皇帝が不智の言語で何かを叫んだ
「!!!!」
 聴解不能なその声は、墓所へと進入した時と同様の渇きを私達にもたらした。贄を選別する王家の呪いだ

169
『ファラオ・ブランデッド』
 皇帝が手を翳すと体中の血液が渦を巻き、身を破ろうとするか様な苦痛が沸き上がる。慌てて私は打合せ通りに煙幕玉を床に叩きつけた。煙の中で先輩が私と自身に変身呪文(旧)を唱える。木乃伊へと姿を変えた私達は枯れ木の中へと駆け込み混ざる。煙が晴れ、彼らは私達を見失っていた

170
『琥珀の皇妃フィフィ』
 現れた少女が指さすと、三度味わう渇きの感覚と共に私達の変身が解かれていく
 少女は蔑みの視線を向けながらゆったりと歩み、玉座の隣の皇妃席へと腰を下ろした。正体を暴かれた先輩が慌てる様子も無く静かに言った
「うわぁ、皇帝ロリコンだったかー」
「ち、ちゃうねん」
 皇帝が首を振る…普通に喋ったし

171
『キング・レミング』
「エクステンションを2度使った地形を埋め尽くす程のレミングが集まると、なんと合体して、キングなレミングになるのよ!」
「それデマですよ」
「うそん!」
「正確には、8体じゃなくて、10体です」
「普通、8体でしょう?」
「知りませんよ」
…10体の方もデマでしたけど、おのれ


12/09/28
172
『海豹姫ウィンリィ』
「ウィンリィちゃん参上!」
 群れからはぐれたらしいセルキーの子を保護した私達の前に突如現れた少女
「いたいけな子供を攫う悪党めっ。例え広き海原が許しても、ウィンリィちゃんが許しません!」
「え、違っ」
「君なら攫いたいな、ベッドの中へ一晩中」
 また先輩は、いらん事をっ!
「へ、変態っ。やっぱり変態ですっ!。海豹アタークっ!」
 彼女は被っていた海豹の皮をこちらへぶん投げた。

173 
『ダイナマイト・ダンディ』
 先輩と巨人の紳士が、激しく踊っている。互いの口には造花の薔薇が咥えられていた。造花にはマテリアルを使った仕掛けがしてあって、歩調が乱れたり、力強さが無くなったりした場合、…爆発する。もう何時間も踊り続けている二人に、感動さえ覚えつつあるあたり、私の中の何かもまた、汚染され始めているのだろう。やヴぁい

174 
『ニトロ・ランナー』
 円を描いて椅子に座った参加者12人の眼前を、装飾過多な壺に足の生えた異形の生物が走る。壺の中からは火花が散り、薄暗い部屋内を照らしていた。あの火花が消えた時、その生物は壺の中に入れられたマテリアルという特殊物質と反応し、爆発するということだった。…正面に座る人物を道連れに


12/10/03
175 
『略奪竜の群れ』
「オーバー・ドライブ!」
 先輩の唱えた呪文の波を容易く掻い潜り、爬虫類の集団が凶悪な牙を剥く
「アイス・ジャベリンッ」
 先に波の飛沫を浴び濡れていた為か、群れは私の唱えた氷槍の冷気を浴びる端から動きを鈍くし、残らず倒れたのだった
「寒さに弱い爬虫類ってまだいたのねぇ」
 大昔のダイナソアは氷槍は平気だったり


12/10/09
176
『首長竜』
 海上に突如出現した海竜へ対抗する為、スナイパーさんを召喚
「もの凄く久々に呼ばれた気がする」
「早速だけどあれを焼き払ってちょうだい」
「…え」
「ゴッドフィストで援護しますから」
 渋々と飛んでいくハーピィ。結果は…
「ディプロドクスが倒せないって歌があったわねぇ」
 しみじみと先輩が溜息

177 
『ゴブリン按摩師』
 大変立派な佇まいのマッサージ店があったので、ほう、これはきっとたいそう腕の良い按摩師のいるお店に違いない、と入ってみる事にした。小鬼に案内され先に先輩からサービスを受ける事に…そして響き渡る絶叫。よく見るとメニューには巨人専門の文字が。うん、家具が皆巨大過ぎるのでおかしいとは思ったんだ。私の代金分も先輩にサービスしてくれと店員に伝え、私は先に店を出た


12/10/11
178 
『ハウリング・ヒドラ』
 峠を通る旅人は多頭の竜の咆声を聞くと、迷い、惑乱し、最後は身動きも出来ず、そこを一飲みにされると老人は語った
「その竜は“峠のジャイアン”と、呼ばれておる」
「竜なのに峠のジャイアントなんですか?人型に近いとか?」
「小山ほどもあるヒドラじゃそうな」
 謎の残る伝承


12/10/22
179
『太陽の巨神ルーグ』
「やぁ、勉強は順調かな」
 輝かんばかりの爽やかな笑顔でその巨人は現れた
「う、兄さん…」
「眩しっ!」
 巨神の姫が、何故か先輩も彼から目を逸らす。立派な兄弟を引き籠りが苦手としているのは何となく感じ取れるが…
「閃光ダメージがっ」
 あんたはアンデッドか何かですか

180
『エクステンション』
「この儀式は効果終了時の内部状況に注意すること」
「それって中に人がいたら…」
「少々窮屈な事になるかな」
「逞しい胸筋が押し付け合って咽返る雄の香りに二人はいつしか…ってことですね!」
「まぁ、願望って成功への大事な要素だしね」
 先輩が巨神姫の教育方針を決めた瞬間だった


12/10/26
181
『風神ヴァーユ』
「ヘイッ!うちの神さんヴァーユ様!供物の3倍リターンする。ちょっち素敵な神さんなんだぜイェッー」
「イェハッ、激ゲキ、胡散臭いZE!チェ螻蛄っ」
「おれっちも、そう思うけど、これマジ。マジなんだぜ。イェハッ」
 訪れた神殿での神官と先輩との会話。久々に変なの引いたなぁ


12/11/02
182
『戦争の女神モリガン』
 瞬間、戦乙女の背負う光が細く一条伸びて先輩を薙いだ。それだけで先輩が膝をつく。外傷は無い様だが目に見えて憔悴し、呼吸が荒い
「先輩!」
「ん、力強くはあるが随分と濁った魂をしているな」
「うっわ、なんか凄い良く解る」
「…をぃ」
 さもありなんと頷く私を先輩が睨んだ

183
『アイアン・ゴーレム』
 何時ぞやの人形の様な魔法生物が再び現れた
「このアイゼリーネは通常のAゴーレムより装甲と拡張性を増している。その分ちょっと機動性が悪いけど、G・Gのように殴り合いで引けは取らないよ!」
「氷槍」
「うわっうわっ僕のアイゼリーネがカチコチに!」
 わざわざ弱点を説明してくれるとは有難いことです

184
『ゴルゴン・スネーク』
 先輩の魔獣が吐きだした霧に触れた巨大な芋虫は、みるみる石化していった
「ま、なんてーの?気合いで大砂蟲をどうにかしてみせるのが火竜って奴よね」
「それ蜥蜴ですしー。ドラゴンじゃないですしー」
「そうね。最近の火竜よりも、‘らしい’からつい」
 くっ、特に理由も無いけどなんかくやしい

185 
『赤蠍のバーンナイト』
「彼らは凄いよ」
 ライダーの説明によると、灼騎士達は尾から可燃性の特殊な気体を噴出する事ができ、その気体で造った炎で敵を焼いたり、加速に使って突撃力を増したりするらしい。また、その香りは対象をまひ状態にするとか
「…おなら?」
 先輩がぼそっと呟くのが聞こえた


186
『獅子姫レオーネ』

「予算(手札)が無ければ、国庫(山札)を使えばいいじゃない」

~発言者レオーネ~

187
『獅子心騎士エヴァ』
「戦争は兵量(手札)が無ければ始まらない。人事を尽くして天命(ダイス)を待つが正道」
~発言者エヴァ~

188 
『麗しき銀獅子レグルス』
「お金を使って運頼みなんて下策だよエヴァ。堅実にある物を使えば結果は予測出来るものさ。もっとも美しい戦いをする為にはやっぱりそれなりに準備(英雄点)はいるけどね」
~発言者レグルス~

189
『神猫妃ラーラ』 
「というわけなのですけど、財政難の折、どうすればいいでしょう教授」
「全員首にすればいいんじゃないかな」
 微笑んで先輩。その先輩に笑い返してバステトの王
「ネメアちゃんはそのままでかまいませんよね」
 この人も大概だなぁ


12/11/06
190
『角眼竜』
 戦巫女に指揮された翼竜が、敵群の中に立つ巨大な鉄怪、鋼鉄のゴーレムへと矢の様に飛翔していく。それに気付いた対象は鉄の巨腕を突き出す。誰もが肉塊と化す翼竜を予測した。しかし、響いたのは肉ひしゃぐ音ではなく鉄を裂く不快な異音。大穴を開けられた鉄の人形が鉄屑となって崩れ落ちた

191
『ダーナの恐竜王子(B3』
 翼竜は更なる獲物へと突貫する。そこに旋風の呪文が放たれた。乱れる風にさしもの竜もたまらず舞落ちる。あわやという瞬間、戦場に雄叫びが響き渡った。如何なる導きか竜は墜落から身を立て直し、また一つ鉄屑の山を作りだした。
「またせたな」
 現れた少年が得意気に笑う

192
『ダーナの恐竜王子(旧』
「チェンジで」
「出てきた途端、酷い事言われた!」
「私の知ってる恐竜王子はこんなんじゃないもん!もっと可愛い感じだし!」
「知らねーよっ!」
 なんか先輩、ダーナの精霊に会う度、似たような事言ってるな
「何こいつ!?」
 巫女に問う王子だが
「遅れてくる奴なんかあたいも知らない」
 膠も無い


12/11/07 
193 
『テンタクルス』 
「そのぬるりとした光沢をもった無数の触手が繰り出すだろう、激しい攻めを想像すると、恍惚にも似た衝動が僕の体を震わせた」
「ちょ、官能小説の音読とか止めてください」
「先手を取られてはならない。迂闊な攻撃も危険だ。ならば、と僕は螺旋剣を構え…バトル物だけど?そっかエロく聞こえたかぁ」
「…じ、冗談ですよぉ。知ってましたよぉ」
 く、罠だこれ


12/11/08
194
『ガリュンバー・アイ』
 周囲の魔法生物の残骸を吸収し、そいつは巨大な瞳の様な部位を輝かせる
「あれに対抗するには!」
 先輩が懐から、何かを取り出した
「ガリュンバーの瞳~!先に動いた方が負け!」
「決着がつかないので真面目にやってください」
「あい」
 存外素直に頷くと、先輩は龍鏡使を召喚した


12/11/09
195
『斬込隊長キルデリクス』
「疾風怒濤! 一刀両断ッ!!」
 半人半馬の剣士が、荒れた戦場を他の追随を許さぬ速度で駆け、鎧袖一触、先陣の敵兵に獲物を叩きつけた
「俺の斬馬刀に断てぬものなし!!」
「断つっていうか、…ぐちょぐちょやん」
「ケンタウロスが斬馬刀ってのもなかなかシュールですよね…」


12/11/13
196
『ミスト・ドラゴン』
 昔、湖には盲目の竜が棲んでいた。竜の体からは絶えず霧が噴出しており、霧に迷った旅人や動物を湖に引きずり込んでは喰らっておった。どんな高名な戦士も魔法使いも霧の中では竜を見つけられず退治できない。ある時、一人の僧が、霧の中へ黒い石を投げ込むと、霧は瞬く間にはれ、姿を現した竜は僧と仲間に討ち取られたのだった。それ以来この地では霧が深い日は黒耀石で作られたものを懐に入れるようになったとさ
「たぶん、鏡でもOKですね」
という伝承

197
『鬼斬りゴンドウ』
 疾る半馬の剣士の前に、異貌異装の鬼族が立ちはだかった
「俺はゴンドウ!鬼斬りゴンドウ!鬼巫女の剣よ!」
 名乗りながら接敵した男は腰の刃を抜き放つ
「受けな!凪の壱番ッ!!」
 剣士が牽制にエア・バーストの呪文を唱えた
「薙ぎ払え!風ごと奴をッ!!」
 男の刃が聖焔の輝きを纏う


12/11/14
198
『ゴブリン遁走団』
「彼らを追ってはならない。小心は彼らの知恵なのだから」
「…教訓めかしてますが、つまりめんどくさくなったと」
「あのね、もう走れないの」
「いいですけど、向うは見逃してくれないみたいですよ」
 逃げた筈の小鬼が路地裏から顔を出した。その数を増やして
 先手を打たれたなぁ


12/11/15
199
『海皇神ポセイドン』
「海皇神は珊瑚礁の隙間に生息しているらしいわ」
「その言い方だと小魚みたいですよ」
「サメに襲われた海女を助けた事もあるんだって」
「へぇ」
「私が思うに、覗きに来てただけなんじゃないかな。濡れた海女さんはエロいからね!」
「先輩じゃあるまいし」
「だって男には雷落とす話しかないんだよ?」

200
『黄蛇姫マソ』
 その浜には黄蛇姫の伝承がある。満月の晩、月光の下、その海妖はおぞましくも美しい蛇体の脱皮を行うのだそうだ。その時、真水を桶ごと差し出すと、彼女はその水で鱗を洗い、桶に彼女の脱いだ黄金の鱗を入れて返して寄越す
「洗うとか有り得ないよね!?」
 あんたがありえないよね






 
 
おまけ
 
先輩


登録タグ: SS 

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テーマ:モンスター・コレクション投稿日時:2012/11/16 23:53
TCGカテゴリ: モンスター・コレクションTCG  
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