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盆休み明けの月曜日。八月も半ばを過ぎれば涼しく感じるものだが、今年はその気配が一向に無い。ラジオのお天気キャスターは冷房の効いたスタジオから、今日も一日暑いだの言う。
「暑ぃ……」
流行の省エネ志向もどこ吹く風。冷房を全開にした車内。しかし太陽の陽射しというやつは、ガラスと冷気の壁を易々と通り抜け、容赦なくハンドルを焼いた。私の車の構造上、エアコンの吹き出し口を直接ハンドルへ向けることは出来ない。普通はそれでも車内の温度ともに冷えていくものだが、残念ながら今年の暑さは普通ではないらしい。拷問のようなドライブだが仕方がない。私はそれでも会社に行かなければならない。なぜなら、仕事があるからだ。
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「……事故かな?」
私が勤める会社が入っているARRビルは地上146m31階立ての建物で、ここ仙台では充分に高層ビルと言える代物だった。そのビルがちょうど私の視界に入ったところで予期せぬ渋滞に遭遇した。そらから10分以上動く気配がまるでない。そろそろ降りて様子を見ようかと思った矢先、あれだけ私を苦しめた陽射しが不意に途切れた。だが、妙に薄暗い。雨でも降るのかと思い窓越しに空を見上げた。はじめは、それが何なのか分からなかった。途方も無く巨大な赤い何かが空に浮かんでいた。次に何かを考える前に車が激しく揺れた。私はわけが分からないままハンドルにしがみついた。少しの間そうしていると、不意に震動は止み、陽射しが戻ってきた。
「……一体なん…って、あ?」
私は顔を上げてすぐに、間の抜けた声を上げた。ARRビルが炎上していた。だが、声を上げた原因はそんなことではなく、炎上するARRビルのすぐ脇に羽ばたいている生き物の存在だった。地上146mのARRビルより二回りは大きいその生き物は、トカゲのような身体に翼を持っていた。私はファンタジーの世界で最も有名で強力な存在の名前を連想した。
「ドラ…ゴン……」
刹那、クジラの鳴き声のような重く響く音が車の窓ガラスを震動させた。それが合図となって、車の外では人々が我先にと叫び声を上げながらARRビルとは反対の方向に駆けてゆく。パニックだ。私はその様子を見て、今日は会社を休もうと思った。
(つづく)
テーマ:二次創作 | 投稿日時:2011/08/17 23:30 | |
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