国内TCGにいちゃもん

はてなブログではMTGのゲームデザイン論について語ってます。
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【Z/X】ゼクスに今いちばん必要なカード

個人的には「パワー3500以下のスタートカード」だと思います。
なぜかというと、序盤の事故展開とルーティン化を軽減してくれるから。


(ゼクスには最近復帰したので、環境には正直ぜんぜんついていけてないです。
 カードリストだけはざっと眺めた上で記事を書いてはおりますが、
 いやそれ前提まちがってるから! とかもう解決してるから! とかありましたら
 ご教授いただけるとほんとうに助かります。)





■低コスト域のパワーの上昇幅はゆるやかでなければならない


遊戯王のように、攻撃側が攻撃対象を指定して殴れる戦闘システムを、
自分はハント型の戦闘システムと読んでいます。
(もう一方がMtGのような防御側指定、ブロック型の戦闘システムです)。


ゼクスの戦闘システムは攻撃側指定のハント型に入ります。


このハント型の戦闘システムでは、
低コスト域のパワーの上昇幅はゆるやかでなければならないと自分は考えています。
どういうことか?


1コストと2コスト、2コストと3コスト、3コストと4コストの生物で、
共通したパワーの値を持っている必要がある、ということです。

単純な例をあげると、「パワー3000」の生物は
2コストにも3コストにも配置されていなければならない、ということです。

つまり2コストの生物で3コストの生物を倒せることがある、
というようなステータス設計が必要だということです。


たとえば2コスト生物の基本パワーは3000、
3コストはパワー5000、4コストは7000……というように、
1コストごとに対するパワーの上昇率をあまりにも大きく設計してしまうと、
同コストかそれ以上の生物を展開することでしか相手の生物を倒せなくなってしまいます。


ハント型の戦闘システムではこのような状況下で、
パワーで劣る生物を「とりあえず出しておく」という選択肢が非常に弱くなります。

ターンを渡せば自分より大きな相手の生物から攻撃先に指定され、
何らかのトリックを握っていないかぎり一方的に狩られて終わるからです。


攻撃先を選べる戦闘システムを採用するのであれば、
生物の(特に低コスト域の)パワーの上昇幅は
ゆるやかに設定されていたほうがよいということになります。



■ゲームがルーティン化する


ハント型の戦闘システムで低コスト域のパワーの上昇率が大きすぎると、
ゲームはルーティン化します。


コスト3のクリーチャーを出さなければコスト3のクリーチャーを倒せず狩られてしまう、
コスト4を出さなければコスト4を倒せず狩られてしまう、ということになれば、
展開の選択肢が実質一択になってしまうからです。

マナカーブに沿った動きだけが最適解になり、
それ以外の動きは相手に一方的に指定ハントされるだけの事故展開に
なってしまうわけです。



自分はゼクスの「最初から2マナ置いた状態でスタートする」という
ゲームシステムを非常に気に入っています。

ゲームスピードが加速するからではなく、
0マナでスタートするよりも序盤の展開が多様化するからです。


0マナスタートの場合、第一ターンにプレイヤーがとりうる行動選択は
・1マナチャージして1コストのカードをプレイする
しかありません。


しかし2マナスタートであれば、
プレイヤーはマナチャージして3マナになったあと、
・3コストのカードを1枚プレイする
・1コストのカードを3枚プレイする
・2コストのカードをプレイして1コスト分インスタントを構える
と第一ターンから多様な行動選択をとれるわけです。



しかしゼクスでは、2マナスタート制を採用しているにも関わらず、
第一ターンの行動選択が
・3コストのカードを出して相手の3コストカードを殴る
の一択しかありません。

2コスト生物を展開しても、相手の3コスト生物(含むスタートカード)とは
パワーに差がありすぎるために、殴ったところで破壊できないからです。

第一ターンに3コスト生物を展開できなかった場合、ゼクスでは事故展開になります。


せっかく序盤の展開を多様化してくれる2マナスタート制を採用しているのに、
これではその利点がほとんど活きていません。




■そこでパワー3500のスタートカードです


もちろん序盤のルーティン化に対する一番の根本治療は、
低コスト域でのパワーの上昇幅をもう少しゆるやかに設計することですが、
第五弾も版のすすんだゼクスで、これはちょっと手間がかかりすぎます。


自分がパワー3500以下のスタートカードが必要だと最初に述べたのは、
この問題のいちばん単純でかんたんな解決法のひとつだからです。


パワー3500以下のスタートカードとは要するに、
2コスト生物でも破壊できるスタートカードということです。
それがゼクスの序盤のルーティン化、それと事故率を多少なり軽減してくれます。


初手の2コスト生物でも殴れる先をつくることで、これまでの
・3コストを出してスタートカードを殴る
に加えて
・2コストを出してスタートカードを殴り、1マナイベントがあれば構える
という選択肢が実用的になり、
第一ターンにプレイヤーがとれる行動選択が二択になるわけです。
初手に2コストゼクスしか出せなくても、事故展開にならなくなるわけです。

後手のとれるアクションも、従来に加えて新たな応手である
「2コストを2コストで殴る」が追加されるので、
やはり第一ターンの展開パターンは増えるわけです。


当然ながら、パワー3500のスタートカードの効果は
現行のパワー4500のものよりも強力なものに設定する必要があります。

しかし単にパワー4500の上位互換の効果を与えるだけだと
今度は既存のスタートカードが無用になってしまいます。

最初は種族効果や特定カード名依存効果などにして、
すべてのデッキのスタートカードが一挙に置き換わることにはならないよう、
段階的にプールに追加していくのがいちばんよいはずです。
(まさしく《冒険するプリニー》のような効果が適任です。)




もうひとつ、より広汎な解決策として、
「低コスト域での効果によるパワーの上昇幅を逆にもっと大きくする
というのがあります。



天駆ける軍馬スレイプニール
[2]
3000
このカードが攻撃した時、ターン終了時まで、このカードのパワーを+1000する。



たとえばこれ↑ならば、



天駆ける軍馬スレイプニール
[2]
500
このカードが攻撃した時、ターン終了時まで、このカードのパワーを+4000する。



このように、効果を使えれば1コスト上の生物も倒せるくらい大きな修整値を与える、
ということです。
その分デフォルトのスペックを下げて、振り幅を大きくデザインするのです。


「3コスト生物を倒すには3コスト生物を出すしかない」という問題を解決し、
やはりゲームのルーティン化を低減してくれます。


最大の問題は、こちらもデザイン自体は簡単でも、
バランス調整がスタートカードよりもだいぶん難しいのです。
数を刷りすぎると確実に低コスト速攻ゲーになってしまいます。


とはいえ例示したカードも含めカードリストを眺めてみると、
ゼクスは低コスト域の効果修整値が全体的にひとまわり小さいように感じます。

ゼクスのようなゲームでは、パワー修整というのは影響力の低い効果であり、
1コスト上のカードを打倒できるような上昇幅でもなければ、
無意味化してしまうリスクの大きい不安定な効果なのです。



■現代TCGにおいて、パワーは相対値になっている


長くなったので詳述は別の独立したエントリで行いたいと思いますが、
現代TCGのほとんどでパワーは相対値になっている
ということに触れておきます。


たとえばMTGのようなゲームでは、パワー=ライフダメージ値です。
パワー2がパワー4に強化された場合、ゲームエンド力は2倍になります。
10回パンチでプレイヤー1人殺せるところを、5回パンチで済むようになります。
MTGはパワーとゲームエンド力に相関があります。


しかしゼクスほか、現代TCGのほとんどで、
パワーとライフダメージに相関がありません。
パワー1000がたとえパワー10億に強化されようと、ゲームエンド力には
一切影響がありません。
ゲームエンド力に関係するのはパワーとは独立した別の数値、
ブレイク数だったりスマッシュ値だったりATK値だったりするわけです。


パワーとライフの相関が切り離されたゲームでは、
パワーは相手との相対値でしかないということを覚えておく必要があります。

MTGにおけるパワーの値は、
もちろん相対値でもありますが、どんなに環境が変わろうと
ライフ20という数値に対しては常に影響力の変わらない絶対値です。

しかしゼクスやそのほか現代TCGにおけるパワーの値は、
相手生物と比較するための値、あるいは火力耐性など、相手環境に依存した数値であり、
環境が変われば価値や適正値の変わる数値である、ということです。


自分が上で
「1コスト上のカードを打倒できるくらいでなければパワー修整は無意味」
といったのはそのためです。

パワー=ライフダメージ値であれば、
どんなパワー修整でもゲームエンド力を強化するため意味があります。
しかしパワーが相手との相対値でしかないゼクスのようなゲームでは、
微小なパワー修整はゲーム展開によってまったく無意味化してしまう可能性を持つ、
不安定な効果になっているのです。


これについては、別のエントリでもうすこし突っ込んで書こうと思います。



■まとめ



・攻撃側指定の戦闘システムを採用したTCGでは、
 1コストに対するパワーの上昇幅を緩やかにしないと、ゲームがルーティン化しやすい。
 (2コスト生物では3コスト生物を倒せない
  =3コスト生物を倒すには3コスト生物を出すしかない)


・ゼクスの序盤のルーティン化を抑止するには、
 「(2コスト生物で倒せる)パワー3500以下のスタートカード」をつくるのが
 いちばん手軽でよい。「3コストゼクス引かなかった…」の事故パターンも削れる。


・仮に3500スタートカードをデザインする場合、
 従来の4500スタートカードよりも強力な効果を持つ必要がある。
 しかし最初は種族やカード名参照など、入るデッキを限定する効果でデザインして、
 すべてのデッキのスタートカードが問答無用で置き換わらないよう
 段階的にプールに加えていくのがよい。
 あるいは1色や2色にだけ限定的に与えることで、それがその色の独自性になり、
 「いつもと違う新鮮な対戦体験」をプレイヤーに与えられる。


・パワーとライフダメージ値が独立した現代TCGの多くでは、
 パワーは環境やゲーム展開に左右される相対値にすぎない。
 そのため、パワー修整は効果の幅をよほど大きくしないかぎり、
 無意味化するリスクを持った不安定な効果になる。



そんな感じです。
なにか思い違いとか「えっVジャン見てないのもうあるよそういうの」とかありましたら、
コメント欄でお教えいただけるとたいへん助かります。

登録タグ: 株式会社ブロッコリー  Z/X 

あなたはこのブログの 6087 番目の読者です。


テーマ:いちゃもん投稿日時:2013/10/01 02:17
TCGカテゴリ: Z/X -Zillions of enemy X-  
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現在“7件”のコメントがあります。
美々原とりす ルーズ さん [2013/10/01 16:49]
コメント失礼します。

ゲームのルーティン化については、先攻をとった場合、先攻側は3コストを出す必要があるのは、その通りです。最初の2コストは後攻にイベントを使うチャンスを与え、デッキ構築次第で、先攻後攻の有利不利を無くすためだけにあるといっても良いです。
これが無いと、基本後攻側は不利になりますから。

先手と後手の差を無くすためにそうしてあるという観点から見れば、
先攻にはなるべく1ターン目に有利になる選択肢を与えるべきではないと思います。

3コストで事故るのが嫌なら、優秀な物も増えたIG無しの3コストをもっと積めば良いという話ですしね。

カードパワーに関しては、結局の所、全体のバランスを考えれば1コスト1500査定で、強力な能力を持っている者ほど-査定をくらうという今の形が一番良いんじゃないかと思います。

Z/Xは3×3のスクエアで戦うゲームな上、生物にダメージが累積して、相打ちもない、攻撃側の生物が一方的に有利なシステムなので、何だかんだで、強いの一体出すより、相手のPSを3コストででも囲んで殴る方が強いゲームですからね。
PS以外に出てきたでかいのは位置によっては無視したり、移動させたり、除去したりできますし。

基本的に同じコスト帯にしか倒されないという程度の特典がないと、ただでさえ強い速攻に勝てなくなりますから。

強い能力を持っている奴は、自分より下のコストに倒される所も良いバランスしてるんじゃないかなと思います。
かもね/泣 tok さん [2013/10/01 23:05]
・ゼクスの序盤のルーティン化を抑止するには、
 「(2コスト生物で倒せる)パワー3500以下のスタートカード」をつくるのが
 いちばん手軽でよい。ついでに事故率も軽減できる。

→この部分が理解できないです。スタートカードとして3500を採用するメリットはなんなんでしょう?既に5000のスタートカードが存在する以上3500を採用する理由はないですよね。
Avatar-of-raven 凶月 さん [2013/10/02 14:45]
かなり心象や気分を悪くされてしまうかもしれませんが、

自分は引き弱いんで、そのターン中での最大コストのカード出されると対処出来ません。なので1つ以上下のコストのカードで簡単に対処出来るようにしてください。

って解釈されるような文に見えます。

効果が強くてパワー下げられてるカードはいくらでもあります。それをさらに極端化させれば1ターン目のルーチン化がなくなるわけではないかと。

先攻1ターン目(後攻0ターン目)に一定の選択肢しかないのはわかりますが、数値や効果の変化で変わるものではないかと。

将棋でもチェスでも、第一手目はさして変わらない動きだと思いますが。
川原かける 漆黒 さん [2013/10/03 05:48]
コメント失礼します。割と口が下手な方なので、気を悪くしたらすいません。

ゲーム序盤のルーティン化と言いますが、抑止する必要性がさっぱりと理解できません。

ぶちゃけますと、序盤のルーティン化は初心者が非常に入りやすいです。基本の動きが一回の説明で伝わりますし、伝えにくいマリガンも3コスト引いてるか否かで判断しやすいですし。ついでに、プレイングで差が付きにくい序盤と言うのも良いところです。初心者でも勝てる可能性になりますんで。
そして、ゼクスがはカジュアル向け故に新規はいつも欲しい層です。なら、無理に序盤を複雑化して新規を遠ざけるのはマイナスでしかないと思いますが、如何でしょう?


あと、話は変わりますが、実際に3500のスタートでても誰も使わないと思いますよ?1点のリスクはそれだけでかいんで。ハイリスクすぎます。
TFS2 Fタカマサ/赤靴斬 さん [2013/10/04 01:55]
コメント失礼します。

面白い。
分かりやすく書かれてくれてとても良いのだが、面倒なところを省くと、要するに『2コストスタートカードが必要』ってのと『その他の相対性』ってことだよな。

戦術的にハイリスクハイリターンな『2コスト低パワー強力な効果持ち』ってのは面白くなるかもしれない。
カードゲームで選択肢と結果が増えるというのは重要なことだ。
しかし、漆黒さんの言うとおり、それらが増えるということは新規初心者が減るということになる。
Z/Xはまだ発展途上にある。
そのため他のカードゲームに呑まれる可能性を減らすためにも序盤のゲームの多岐化は避けたい。

逆に、ユーザーが増えれば作ってもいいかもしれないカードの種類の一つだろう。
ハイリスクハイリターン、大いに結構。
ではどのような効果があると面白いのか、自分なりに考えてみた。
『黒、2コスト、パワー3500、効果:チャージトラッシュ&1コスト、ノーマルスクエアの5コスト以下1枚破壊』
『緑、2コスト、パワー2500、効果:チャージトラッシュ&1コスト、山札から二枚をリソースでスリープ』
『青、2コスト、パワー2500、効果:チャージトラッシュ&1コスト、山札から二枚を手札に加え、1枚捨てる』
白と赤はそれぞれパワーとダメージなので計算して。

こんなかんじかな。

あとついでに書いとくと、パワーとライフの相対ですが、例外はあります。
『地上最凶 呂布奉先』です。
つまり呂布のようなものを大量に作れば、赤、あるいは白、緑にパワーとライフに相対値が付きます。
もっとも、ライフ4の世界でこんなのがわんさかいても困りますが。
しかし、Z/Xレア、100ポイント系のカードが増え、それ以外のカードでもライフを削る者も出てきました。
Z/Xの現状、対戦時間を短くする考えは分からなく無い。
守り型が多い私からすれば気の良い話ではありませんが。
この現状ならばそういうカードが増えてもおかしくはないということです。

私から相手との相対で言いたいことは二つ。
攻め型と守り型のバランスを崩してはいけない。
崩さない範囲で面白い効果を加えていってほしい。
現状ではバランス崩れは起きてないので面白いと思う。
標準のアバター ながさき さん [2013/10/06 14:28]
初めましてこんにちわ

私は都内のカードゲーム会社でデザイナーをしている者ですが
とても面白い記事だったのでコメントさせて頂きました。

私は6歳の息子や甥っ子とゼクスを楽しんでいるのですが

始めたばかりの子供でさえ最初の攻防がつまらないと言っています。
なので、3500スタートカードというのは序盤のゲーム性が難しくなりすぎず、かといって単調にもなりづらく、とてもいいと思います。

序盤が複雑になって新規の方が減るというよりも、むしろゲームとしてより面白くなり増えるとさえ思います。

とても良い記事でした。また拝見させて頂きます。
萌えアルド I love TCG さん [2013/10/12 08:54]


コメントが遅くなって申し訳ないです。

私も絶対間違いないわコレという確信を持って記事を書いているわけではなく、
みんなどう思ってるんだろうな~コレという感じでおそるおそる投稿しているので、対論にしろ同意にしろ、コメントをいただけるのは本当にありがたいです。




結論である「3500以下スタートカード」についての異議というより、
論拠である「序盤のルーティン化問題」について疑問を感じた方が多いのだと思います。

ルーティン化問題についての指摘をまとめると、


・先手と後手の差をフラットにするためだから問題ではない
・事故がイヤなら3コストを積めばよいのだから問題ではない
・初心者が覚えやすいから問題ではない


この3つになりますね。


うち下の2つは両立しにくい意見かなと思います。
初心者のために序盤のルーティン化は必要、というならば、初心者のために事故率の低減は必要、とも言えるわけです。


自分の体験を振り返ってみても、幸運な引きで接戦を制したゲームというのは楽しいものですが、不運な事故で相手を一方的に倒してしまったゲームというのは自分にとっても相手にとってもつまらないものでした。
自分が事故るからイヤだ、といっているのではないのです。事故が起こるゲーム自体がつまらない、といっているのです。
私が提示しているのはゲーム全体の事故率を減らせるという根管治療です。3コストを多めに積むという対処療法は、そのうえでおのおのが自由にやってよいわけです。このふたつはまったく両立できるわけですから、「事故がイヤなら3コストを積めばいいので問題ない」というのは、反論として不十分になります。


もうひとつ、初心者のためにも運要素はたしかに必要ですが、だからといってどのような運要素も受容すべきだとは思いません。TCGの運要素は、「幸運な(ポジティブなフィードバックをもたらす)運要素」であるべきです。事故のようなネガティブな運要素は排除できるならば可能なかぎり排除するべきである、というのが自分の考えです。




いちばん下の初心者の覚えやすさに関していうと、これはルーティン化の功の面だけを切り出した意見かなと思います。ルーティン化したゲームは確かに初心者には覚えやすいですが、同じくらい飽きやすいゲームであるともいえるわけです(ながさきさんが触れているとおりです)。

このようにルーティン化には功罪があるわけで、私たちが考えなければならないのはもう一歩先に進んだ結論部分のはずです。つまり複雑性(入りやすさ)と多様性(飽きにくさ)の妥当なバランスはどこか、ということです。


ここで触れておきたいのは、多様性の増加はたしかに複雑性の増加と切っても切れない関係なわけですが、一方が上がったからといって、もう一方も必ず同じ量だけ上がる、そういう天秤の関係ではないということです。

ようするに、多様性は大きく増えるが複雑性はあまり増えない、
あるいはそれ以外の部分でのリターンが大きい、
そういう「得なトレード」というのがあるわけです。

私は「3500以下スタートカード」というのはこの得なトレードだと思っています。
つまり増加する複雑性の量はほとんどなく、それよりも初心者が嫌厭する事故やルーティン化を減らせるリターンのほうが大きいと考えているわけです。


「相手の3500スタートカードを手札の2コストゼクスで殴る」選択肢が増えることが、はたして初心者にとってどれほどの参入障壁になるのでしょうか?
たとえ3500スタートカードが相手でも、3コストゼクスのある初手が理想なのは変わりません。マリガン基準はいっさい複雑にはなりません。ただ事故の基準がゆるやかになるだけなのです。


いずれにせよ「初心者に複雑になりすぎるから選択肢を増やすのはダメ」で止めるのではなく、本当に問題となるほど複雑性は増加するのか、得られるリターンとくらべてどうなのか、というところまで踏み込んで議論する必要があるはずです。





いちばん上の、「先手後手の平等化のために必要」というルースさんの意見は、自分のなかにはまったくなかったもので、目からウロコが落ちました(自分のゼクスの環境理解はその程度のものです)。
とはいえこちらも、3500スタートカードの登場がほんとうに先手優位にしすぎるのかというところまで考えると、やはり問題になるほどのことではないと思います。3500スタートカードが持っている能力次第で、それぐらいはどうとでもコントロールできるわけですから。

これは漆黒さんの「パワー3500なんて弱いよ問題」についても同様で、その程度ならばやはり能力次第でどうとでもなるわけです(Fタカマサさんがその下で触れているとおりですね)。



最後に、本文からの繰り返しになりますが、私は今あるすべてのスタートカードがパワー3500に置き換わる、ということを望んでいるのでは決してないのです。
一部のデッキに採用されるようなパワー3500のスタートカードがあればよい、というのがこの記事の論旨なのです。

架空のカードの話になりますが、たとえば「パワー3500になったかわりに+6000修整になった《冒険するプリニー》」というのが出たとして、それがゼクスというゲームに多様性を与えこそすれ一体どれほどのマイナスを与えるのか? ということです(修整値は適当です。コストに見あった妥当な修整値ならなんでもよいのです)。



なお、tokさんのコメントを受けて、本文の内容を加筆しました。
tokさんの疑問に答えられるように書き加えたつもりですので、再読いただければと思います。