Shangri-La

心ごと全部乗っ取るくらいの 誰かのウイルスになる

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06.第三回TCS環境考察part1

◆2009年度後期環境、一旦終幕…
今期のメタゲームでは、多数の構築が跋扈するものの、トップメタ各種
は、「墓地依存」という点で弱点を同じくしていました。
また制限改訂により《死のデッキ破壊ウイルス》が消えた事で、高い
ステータスを持つモンスターを比較的運用しやすい環境となりました。

「次元エアトス」という新たなアーキタイプが生まれた背景として
1:墓地依存に対する、いわゆる「次元」パーツが環境的に効果的である事。
(同時に、自身がその影響を受けない・或いは恩恵を受ける構築である
必要がある)
2:減少物に対する相対的な強化
(例えば、カウンターが全体的に減った中で唯一カウンターを握れる構築
である、等)
3:各種対策に対する「デュアルスパーク(SOVR)」という回答
以上のような内容が挙げられます。

「ライトロード」が最強とされる環境の中で、それに対抗できる構築を
目指す事が課題とされた2009年後期環境は、まさに「ライトロード」
環境であったと言えます。

◆回転するメタゲーム----------「ライトロード」環境から「次元」環境へ
「ライトロード」を攻略するために世界に先駆けて日本国内で新たに
生み出された構築があります。
「次元エアトス」そして「酒アンデ」です。
前者は墓地依存・特殊能力・大量展開と、ライトロードをトップメタ
たらしめている諸要因への対策をメインデッキから多く搭載しながら、
突破できない高打点を叩き出す、従来の《スキルドレイン》デッキの中
でも特に環境的背景が色濃く反映されている構築であると言えます。
後者は、《酒呑童子》と、新しいカードを採用していますが基本コンセ
プトは古くから存在する「デッキレス」、つまり相手の山札を0にする
事を目指したコントロール・コンボです。「ライトロード」は、カード
パワーを限界まで高めるためにデメリットとして山札を削る、という
デザイナーズ・カードですが、相手の大量展開からなる総攻撃を阻止
しながら、「酒アンデ」は、常に削れていく山札を攻める事を目的と
しており、その観点はまったくもって新しいものであると言えます。

「アンデット」「ライトロード」を中心に回転していたメタゲーム、
当初の予想では、"特殊召喚への回答"として《王宮の弾圧》が、"相手の
大量展開"ならびに"相手の対策を突破"する事を目的として最も汎用性の
高い盤面操作の札である《ゴッドバード・アタック》がメインから採用
できる事から、「弾圧墓地BF」という前環境から存在するアーキタイ
プが最強ではないか、とメタゲームは再び更新されていきました。

様々な推測や、各地域の非公認大会から考え得る、九州のメタゲーム。
蓋を開けてみればその実態は、「ライトロード」環境ではなく、
「次元」環境であると言えました。

◆今期環境における課題◆
①「バトルフェーダー」への回答
新弾「Absolute Powerforce」にて登場した《バトルフェーダー》は、
新たな攻撃阻害手段として、各種コンボデッキを強化する事となりました。
今期は、遊戯王史上、稀に見るコンボデッキが大量生産された環境で
あり、もはやメタゲームから度外視する事ができなくなっています。
そこで、非コンボデッキには、このような《バトルフェーダー》を突破
するプレイングもとい攻略法を身につける事が課題となっていました。

その回答は、《サイバー・ヴァリー》という過去の前例から見て取る
事ができたようです。《バトルフェーダー》は、場ではなく手札という
見えない場所から攻撃を阻害しますが、その能力は《サイバー・ヴァリ
ー》と同じく「スペルスピード1の、誘発効果」であります。

遊戯王には、効果処理を行うにあたり大原則として「スペルスピード」
という概念が形成されています。これは他TCGと一線を画す遊戯王なら
ではの特徴で、全てのカードやテキストに対し全てのカードが使用でき
るわけではありません。スペルスピードは三段階に分けられます。
1:(便宜的な表現として)2、3にあてはまらないもの、とすれば判断可能です。
 通常魔法、モンスターの宣言型効果(起動効果)などがあてはまります。
2:速攻魔法、種類が「罠」に分類されるもの、相手ターンでも使用可能なテキスト(誘発即時効果、と表現されます)。
 要するに、「フリーチェーン」と称されいつでも使用可能な効果各種はここに該当します。
3:カウンター罠
カードや効果のプレイに対応して行動する場合、それよりも高いスピードのカードや効果のみが対応して使用可能です。例えば、スペルスピード1に対して使えるのは、スペルスピードがそれよりも大きいもの、つまりスペルスピード2やスペルスピード3のもののみとなります。

この、「遊戯王における大原則」に従い、攻略法は発見されました。
まず、《サイバー・ヴァリー》や《バトルフェーダー》というカードはどちらも誘発条件として「相手の攻撃宣言」が必要となります。

ターンプレイヤーには、常に「優先権」というものが存在します。
これは、遊戯王だけに限らず、一般的なカードゲーム全てに存在する権利で、何かしら順番を問われる状況になった場合、常に最初に行動できるのは、そのターンを行っているプレイヤー(ターンプレイヤー又はアクティブプレイヤーと表現されます。)であります。
つまり、自分のターンであれば、自分は誰よりも早く行動される権利が
保証されるのです。これを利用する事が、新たな戦略に対する回答と
なりました。

まずバトルフェイズに入り、攻撃宣言を行います。
ここで、「スペルスピード1である《サイバー・ヴァリー》《バトル
フェーダー》」よりも早い「スペルスピード2以上のカード」を、優先
権を行使して使用すれば、「使われたカードのスペルスピードよりも早いものしか使えない」という大原則に従えば、実質、攻撃を阻害する
上の二種類のカードは使用する事ができなくなります。
厳密には、スペルスピード3のカードは能動的には使えないため、
スペルスピード2のもののみとなりますが、要するにフリーチェーンの
効果を使用する事が鍵となります。

また、後者の《バトルフェーダー》に関しては「特殊召喚を行う事」が
発動条件であるため、《王宮の弾圧》《虚無魔人》といった、現在の
特殊召喚対策をそのまま採用するだけで攻略可能であったため、《スキ
ルドレイン》まで構える「次元エアトス」等はこの手のコンボデッキに
対して高い勝率を誇ったようです。

1:優先権を行使して、フリーチェーンを先に使う事。
2:テキスト無効、と特殊召喚対策
3:メインフェイズ中に除去しておく。(バトルフェイズ以外での対処法)
以上が、考え得る《サイバー・ヴァリー》《バトルフェーダー》への
対策と言えるでしょう。


②第二の弾圧------《虚無魔人》攻略法
今期の構築は、まず《王宮の弾圧》から出来あがる。
そう言われても過言ではないほど、《王宮の弾圧》が再び頭角を
現わしてきました。「シンクロアンデ」と「弾圧」は常に隣り合わせの
存在のようで、まして過去の環境でトップメタであった「緊テレアンデ」の時と異なり、《大寒波》がいない事も理由としてあげられます。
しかし、一方で流行するからこそ対策、もとい環境的に多く選択される
カードによって副次的に対応される結果となり、使用側も苦戦を強い
られていたようです。

まず、《王宮の弾圧》が対策されやすい罠カードである事。
《魔導戦士ブレイカー》が制限緩和されながら、《王宮のお触れ》等を
対策できる事から結果的に弾圧も破壊されやすくなり、またトップメタ
である「ライトロード」にはメインから《ライトロード・マジシャン ライラ》が採用されながら、《光の援軍》もあるためこれまで以上に
魔法・罠対策がしやすくなっていると言えます。
《トラップ・スタン》など、拡張したカードプールもまた影響を与えて
いるのではないでしょうか。

そこで再び注目されるようになったのが、《虚無魔人》の存在。
多く存在する魔法・罠対策を回避しながらの2400の攻撃力は、場を制圧
するには十分で、ことリクルーター採用型の「アンデット」であれば
場に出るだけで投了するほど勢いのあるものでした。「ライトロード」
に関しても、《オネスト》を握った状態でしか突破できず、《ライト
ロード・エンジェル ケルビム》は結局上級モンスターであり、その
生贄確保は特殊召喚である事から、遠回しな対策になっていると言えます。
《邪帝ガイウス》も同様の手法で対策が可能です。

そこで上位入賞者に多く採用されていたのが、《月の書》。
《オネスト》《BF-月影のカルート》といった環境最強のコンバット
トリックを回避しつつ、シンクロ召喚の際にも素材にアクセスする事で
タイムアドバンテージの獲得に繋がり、《霊滅術師カイクウ》などを
はじめ、表側表示でいる事で対策として機能する各種システムモンス
ターを潰せるデックテクとして機能していました。
また、環境的に「月の書それ自体が減っていた」事もデックテクとして
価値があったと言えます。《次元エアトス》におけるカウンターと
同じく、相手が使っていないからこそこちらが一方的に使用できる、
アドバンテージは稼げないカードですが、プレイヤーの意識から外れて
いるために、予想以上の効果が発揮されていたと言えます。

③「スターライト・ロード」の登場
複数除去に対する回答として《スターライト・ロード》が登場し、
メタカードを搭載した多くの構築が復権する事となりました。
それだけでなく、《スターダスト・ドラゴン》がより出しやすくなった
ためモンスターのステータスのボーダーラインも自然と向上した事と
なります。

「遊戯王」をプレイするにあたって、プレイヤーの意識を形成する
カードとして三種類のカードが存在すると思います。
それは《大嵐》《聖なるバリア-ミラーフォース-》《激流葬》の三枚
で、これらは無数にあるカードプールの中でも、特に容易にアドバン
テージを稼ぐ事ができる、古くから存在する遊戯王の根幹をなすカード
であります。
この三種の神器が存在し、プレイヤーの意識下にある事で、彼らの行動
は大幅に制限されてしまうわけですが、これら全てに対応する
《スターライト・ロード》は実に強力なカードであると言えます。
これらを対策する事で、冬の環境はスタートしました。

考え得る対策は、主に以下の通りです。
[1]単体除去である事。(≒全体除去でない事。)
これを満たす事は比較的容易です。《サイクロン》《砂塵の大竜巻》
《魔導戦士ブレイカー》に始まり、《地砕き》《地割れ》など、複数
ではなく一枚を破壊する効果は現在のトーナメントシーンでも多く
使われており、それを使う事で対策となり得ます。

[2]「破壊」効果ではない事。
《ハリケーン》《大寒波》《強制転移》などがあてはまります。
複数を適用範囲に含みながらも、破壊効果でなければ《スターライト・
ロード》は発動する事ができません。

[3]罠対策
《スターライト・ロード》は強力な効果を持っていますが、条件付きの
通常罠であります。よって、罠への対策を施しておけば《スターライ
ト・ロード》を攻略する事が可能です。

[4]特殊召喚を含む効果
テキスト内に、任意とはいえ特殊召喚を催す事ができる記述がなされて
いるため《王宮の弾圧》《虚無魔人》といった、現在主流の対策カード
で対応する事ができます。

[5]プレイング
プレイングとしては、破壊される対象を単一に絞る(絞らせる)状況を
作る事で対策が可能です。ルールを理解しての対応と言えるでしょう。

このように、強力な効果でありながらも対策は多く施せる事から
《スターライト・ロード》というカードは、「カードプールに存在する
事が一番の仕事」である、優良カードであると言えます。

④新たなサイドボード
環境が更新され、プレイヤーの選択するカードも変化してきます。
まず流行したカードでも特筆すべきは《強制転移》《虚無魔人》そして
《バトルフェーダー》。

《強制転移》は、現在、単一のみで場を制圧するモンスターが環境に
多くいる事からの回答です。《裁きの龍》《虚無魔人》などは特に単体
で場に存在する事が多く、生き残った返しに《強制転移》を使えば相手
の強力な生物を奪う事ができます。特に大量展開を得意とする「アンデ
ット」で採用されるようになったカードですが、これに対しては
《ポールポジション》が有効とされます。魔法効果が一切効かないため
《スターライト・ロード》を意識して採用率が高まった《地砕き》
《地割れ》などの対象を取らない除去へも機能し、また最も攻撃力の
高いモンスターを除去するテキストは条件的にも《裁きの龍》への回答
として機能し、優秀です。

続いて《虚無魔人》には、《奈落の落とし穴》の追加として《落とし
穴》で対応する事も可能です。リクルーターなど、《奈落の落とし穴》
で消せないモンスターの殆どを消す事で、相手の動きを鈍らせる事が
可能です。
また、《王宮の弾圧》が効かないデッキタイプは基本的にモンスターを
手札から素出しするため、《落とし穴》で十分間に合いますし、
何よりもプレイヤーの意識から外れているため、不意をつく事が可能
です。

《バトルフェーダー》等に対しては、フリーチェーンが特に注目される
ようになりました。《突進》などは、打点向上も狙えて有効であると
言えます。

⑤新たな観点からの「対策」
「対策」という表現でまずプレイヤーの意識に生まれるのは、
そのカードの除去(場から取り去る事)が一般的であると言えます。
よって、たとえばサイドボードなどに、環境を見て流行している・
或いは自分が苦手とするカードを破壊する・除去するカードが採用
される事が多くありました。

しかし今回のTCSのメタゲームは、一般的な意識とは一線を画するもので
ありました。
今回の環境では、「対策カードがメインから採用されている事で3本
勝負中、1本目が取りやすくなり、勝率が格段に向上する」事が
「次元エアトス」などで証明されていた事から、環境的に流行している
カードを破壊する、というよりも、むしろ「自分から同じパーツを採用
する」「相手が用意する対策カードの影響を受けない同系」を持ち込む
事で、相手がメインデッキに採用している対策パーツを機能させない
(腐らせる)事で、間接的にマッチ戦の一本目での勝率を向上させる、と
いうメタゲームに変貌したようです。
結果として、特に《王宮の弾圧》の影響を受けない、いわば「次元」
効果を用いた、特殊召喚に頼らずモンスターを使い切っていく
「次元ビート」にも似たような構築が多く存在する環境となりました。

ここから、九州圏内および近隣地域にて
「同じカードを使う」(同系対決・ミラーマッチ)
「対策するのではなく、影響を受けない構築を目指す」(メタゲームの脱線)
が、「対策」として、新たな意識づけをなした、興味深いメタゲーム
であったと言えます。

(続きます)

登録タグ: 遊戯王OCG  大会レポート 

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テーマ:日記投稿日時:2010/01/04 12:48
TCGカテゴリ: 遊戯王OCG  
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