帝です。
http://iamthebornofmycard.info/blog/?p=6755
5月17日付の『----体は札で出来ている。』‡週刊福岡決闘者第115号‡に、文章を投稿させて頂きましたのでこちらにも掲載させて頂きます。
読者の皆々様にとって何かしらの参考になれば幸いです。
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帝です。
今回はサイドデッキについて書いてみます。
サイドデッキ。3本勝負の際、勝負ごとのインターバルでメインデッキと入れ替えるために数枚用意されるカードたちの総称で、「トーナメント」カードゲームを行う上で必須となるデッキ(厳密にはデッキに相当するもので、予備カードの集合のこと。)である。
その呼称は「アグレッシヴ・サイドボーディング」と「ディフェンシブ・サイドボーディング」の二種類に、基本的には分けられる。苦手な相手である”仮想敵”に合わせて対策を用意し、メインデッキに採用しているカードと移し替えるサイドチェンジは後者に属し、かつ一般的であるため、今回はそちらを中心に論じる事とする。
大前提として、勿論、メインデッキのコンセプトに拠る所が大きい。いかなる場合においても、カードゲームにおけるデッキタイプは三つに大分されると思われる。ビートダウン(ウイニーも含める)、コントロール、そしてコンボだ。
例えばビートダウンやウイニー等は、勝ち筋が戦闘のみ、と分かりやすいが故に対策はされやすい。
そのため対策されるビートダウン側は絶望的なマッチアップへの対策に多くサイドデッキの枠を割いたりする。このように、ディフェンシブサイドボーディング(防衛・保守的サイドチェンジ)は、相手を意識する事を以て構築が始まる。
①苦手な相手には対策を多く用意する。
一つのゲーム環境が確立されるにあたり、そこには多種多様なデッキタイプが現れる。それらの中には、有利な相手もいれば、自分のデッキでは不利な相手も存在する。不利な相手つまり「仮想敵」に対しては、二戦目以降は有利に試合を進めたいので対策を多く用意したい。
ここでは、「内容の分散」が一つの基準であるように感じる。というのは、例えば同じカードを最大枚数用意したとする。基本的に同名カードの採用可能枚数の平均は3~4枚で、それだけ積めば期待値を考慮しても一枚は必ず引けるが、それでも引けないと感じる場合、四枚目以降を用意する必要がある。
同じカードは規定枚数しか入れられないので、この場合、テキストが似たカードを用意する事で、「四枚目からの○○」という風に代用カードとして捉えれば、対策を引く確率は向上する。
(例:遊戯王における、《D.D.クロウ》に対する《異次元への隙間》の関係など)
②サイドボードの内容は「8種類」を目指す。
サイドチェンジのやり方が分からない、という人に薦めたい方法である。基本的にサイドデッキは10~15枚で構成される。サイドデッキ10枚のゲームであれば、8種類を目指そうとすると一本挿しが多くなるし、15枚のサイドデッキであれば2積みが多くなる、などそれぞれにどうしても偏りが見受けられるようになってしまう。
例えば、三積みしたカードたちを一枚ずつ削っていく、などサイドからメインへの採用枠の作り方は比較的容易となる事が分かる。また、一本挿しなどの「限界に至らない枚数」というのは、結果的に内容を多岐に渡らせる事が出来、幅広い仮想敵を対策する事が可能となる。
しかしこの方法は容易であるが故に欠点も内包している。採用枚数が少ないがゆえに、そのカードを引かないという事態が発生する事が多くある。カードプール(使えるカードの範囲)があまり規制されていないゲームだと、どうしてもカードパワーがインフレしてしまう。カードパワーがインフレしているゲームにおいて、対策が引けない事はそのまま敗北に直結すると言っても過言ではないため、そのような場合にはお薦めしない。
反対に言えば、確実にサイドカードを引きたいのなら、その半分、3・4種類を目指す事を薦める。
③先手であるか、後手であるか。
例えばカウンター(プレイを無かった事にする効果)や手札破壊など、あらかじめ用意しておかないといけないものは先手でなければ基本的に効力がない。対策される前に相手が動くからである。
後手であれば、除去が優先して選ばれる。何故なら、先に動いた相手の攻め駒を消していく事が出来るからである。
先出しと後出しには優位性の関係が存在する。先出しにあてはまるカードは、想定し得る状況を「無かった事にさせる」強みがある。しかしその一方で”その状況でしか使えない”と状況が限定されてしまう事から、相手を意識し過ぎて自分の動きが阻害されてしまう恐れがある。加えて、限られた状況でしか使えない、という事はそれ以外の状況では機能しにくくなるため、死に札となりやすい。
後出しの場合は、相手の動きを見てから使っていく事が可能で、先出しと異なり状況が限られる事は少ない。
それは死に札になりにくいだけでなく、高いカードパワーを発揮してくれるため、間接的にデッキパワーの向上にも貢献してくれる。一戦目よりも二戦目のほうが強いデッキになっているのだ。
しかし、先出しと異なり「既に場が展開されてしまっている」ため、覆しにくい状況になっている事は多々あるので過信は禁物である。
④メインボードとの対応
入れるものはあるけど、抜くものはどう決めるのか。何をどのようにして外せば良いのか。
サイドデッキの構築を苦手とする原因の大半はここにあり、それを鑑みて、メインボードから外すカードには優先順位があるように思われる。
[1]絶対的に不要なカードの撤去
どのデッキにも起こり得る事態である。例えば動きの速い相手に対して、動きの遅いカードは余程の事がない限り基本的には不要になってくる。メインデッキから対策カードを採用しているとなると尚更だが、逆に言えば、メインから外すカードが非常に分かりやすく、サイドチェンジがしやすい場合もある。
[2]枚数の対応
先に述べた、三積み各種を一枚ずつ削る事、という方法の延長ともみなせる。
入れるカードと外すカードはそれぞれ枚数が同じである事が望ましい。例えば、Aを三枚入れるのに対してメインから外すBの枚数もまた三枚である、など。
「何を外す」のではなく、「何なら外せる」という発想である。
[3]先手か後手か
ここでもこの考え方は重要な割合を占める。特に、ゲームをするにあたって必要なカードがあるゲーム(ガンダムウォーにおけるGeneration、Magic;the gatheringにおける土地など)の場合、基本的に先攻でドローフェイズは存在しないが、後攻であれば原則としてドローフェイズが存在し、相手よりも多く山札を掘り進めていける事が分かる。相手より多くカードが引けるが無駄なカードを引く事は極力避けたい。
この観点から、先に述べたカードは後手ならば削る事が(あくまで)「選択肢として」上がる。
これを知っているか知っていないかで大きく変わる状況もある事を覚えていて欲しい。
[4]例外
それでも外せるものが見当たらず、難しい場面には遭遇する。
その基準として、「カードパワー」がある。メインデッキの安定性に貢献するカードは総じてカードパワーが低い場合があるため、それを二戦目以降外せるなら、限界までデッキを強くしていく事が可能となり、より勝ちが近づくと言える。
これまではディフェンシブ・サイドボーディング(防衛的方法)について論じてきたが、もちろんアグレッシブ・サイドボーディング(積極的方法)についても論じる。
相手に依存して形を変える保護的な対応に対し、相手を無視してさらに自身を強化しようとする方法がこのアグレッシブ・サイドボーディングである。(ディフェンシブに対し、オフェンシブと表現される事も。)
具体例を挙げるなら、一戦目と異なり、二戦目は主要パーツが殆ど入れ替わり、まるで別デッキのような変貌を遂げる。相手の意表をつくこの戦術は、不利を強いられるカードたちをメインデッキから外す事で、相手が二戦目以降に用意してくる対策の影響を最小限に抑える事に加え、特定のアーキタイプに対して効果的な対策を入れてきた相手の行為は結果的に死に札を増やす事になり、それによって無駄引きが増え、その隙に勝ちを狙ういわば情報戦を逆手に取った戦法を取る事が出来る。デッキの相性が一気に逆転したりと、嵌った場合には本当に絶大な効果を発揮する一方で、扱い方が難しいサイドボーディングであるとされる。
まず入れ替える枚数が多い事からサイドチェンジの際に必要以上の時間を要するため、それを軽減させるために瞬時に入れ替えられる練習が必要となる。これはカードを入れ替える、という物理的な行為の際にかかる時間についてもだが、さらに何を入れ替えるのかを予め把握しておかなければならない。さらに、変化前と変化後ともに十分に機能するようでなければそもそもデッキとして意味がなく、総じて相当な練習量が要求される事となる。
また、ディフェンシブ・サイドボーディングと比較して、あまりこの方式が取られない理由の一つに「奇襲性」が存在する。これまでに何度も論じてきた事から分かる通り、アグレッシヴ型の最たる利点はその情報戦における優位性にある。あるデッキタイプが、アグレッシヴサイドボーディングを行ってくると多数の人に知られる場合、その時点でこの戦術は効果が半減してしまう。
しかし、だからと言って情報封鎖を推奨するわけでは決してない事を明記しておく。寧ろ、多数の人間に知られたとしてもその試合には心理戦を持ち込む事ができ、使い手のプレイヤーとしての力量を図る事ができ、個人としての更なるスキルアップを目指す事ができる。
情報封鎖とは究極的には意味がなく、それを乗り越える事にこそ、真の実力が見い出されるのである。
常に目覚しく進化し更新されていくトーナメントシーン。
時代や環境など、バックグラウンドの違いからサイドボーディングに対する現在の考え方については新しいものも存在するかもしれないが、今回は筆者が知り得るいわば一般常識でのみ記述を留めており、加えて、今回記述した内容を以てしても現状通用するものとして考えている。
現役のトーナメントプレイヤーである方。
トーナメントプレイヤーを目指そうとされている方。
多くの読者に参考にして貰えれば幸いです。
文責:
TCS運営委員会大会記録担当
帝
登録タグ:
テーマ:日記 | 投稿日時:2010/05/23 03:27 | |
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