ファンネリア的雑記録

　2/14。殆どの大学では春休みに入っているが、なぜ自分の大学は3学期制などという無駄なシステムの上でいまだに稼動しているのだろう…。
　講義は午前中で終わり、関東とは思えない寒さの中買い物をする気にもなれずそそくさと家に帰り、いつものように大会に向けてのデッキを組むことにした。世間ではバレンタインデー菓子メーカーの策略によるイベントがあるのかと頭の片隅に浮かべながら…。
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　日も落ち、外を見ると雨粒はいつの間にか振るのをやめていたらしく変わりに雪がちらつき始めていて、部屋の電気をつけようと立ち上がったとき、規則的なバイブレーションの音と共に筺体の背面のＬＥＤが光った。

　From ヤジマックス
　To Ledah／Mail List S_Y

Title 非リア友の会

さて突然ですが今日は飯でも食いに行きませんか？いえ特に理由はありませんが！
場所は例の格安食べ放題で！
参加条件
・彼女がいない（某ＤＳのゲームは除く）
・義理でないチョコをもらっていないこと
・その他非リアの参加を募集しています。
7：30現地で。
……

　まあ僕は見事に参加条件を満たしているわけで…。今日の昼間に買い物をサボったせいで冷蔵庫の中もさびしいし、と理由をつけて愉快な友人主催の食事会への参加を決めたのである。
　「さて、雪で自転車凍る前に出ますか。」
と自分に言い、内心
（移動中に参加条件満たさなくなったりし…ﾈｰﾖ）
と成立しないフラグめいたジョークをかまして、関東には似つかわしくないちらつく氷の結晶の中自転車を漕ぎ出した。

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　とかく、大学とその周辺の研究機関を中心とするこの学園都市は暗い。自治体の人口の大半が学生なので、街灯が無いのだ。また、賃貸に駐車場がついていることは稀であり、移動はもっぱら自転車となる。
　例に漏れず僕も貴重な街灯と街灯を結ぶように自転車で移動中であり、向かいから来る無灯火の自転車を毒づきながら進んでいる。早くも熱伝導率の低い芝生の上には結構な雪が積もっている。局地的な雪化粧を視界に入れながら学生の第二の交通機関である大学周回のバスとすれ違った瞬間、車道側から”なにか”が”斜めに落ちてきて”僕は自転車ごと早速芝生の上の雪に小学生よろしくヒト型を作った。

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「ーーーっ……　はぁぁ…」
　体が熱いんだか寒いんだか。雪まみれのコートをハンガーにかけつつ、先程までの状況を確認する。
　率直に説明すれば、『親方！バスが過ぎ去った後の空間からいきなり女の子が！』であろうか。幸いなのか意図されたのかは図りかねるが、見事にヒト型を2つ作って互いに怪我は無かった模様である。もちろん、芝生の積雪はスキー場のようにパウダースノーとはいかず、水分たっぷりの雪に突っ込んだ両者はずぶ濡れである。このまま非リア友の会に行く選択肢はそもそも無いだろう。とりあえず自転車と意識の無い人間を雪の中自宅まで運ぶのは容易ではなかったとだけは覚えておこう、そして今後この知識が役立たないことを祈る。高校の制服のような服装の女の子はずぶ濡れのブレザーを脱がせてベッドに寝かせ、最寄の徒歩0分-要は80ｍ未満-の距離のコンビニで早くも安売りしているチョコレートと牛乳を買ってきて今に至るというわけである。
　エアコンと廃熱を期待してＰＣを立ち上げ、ホットチョコを作る。ホットミルクの予定であったが、きっと糖分がないとコレ以降のごたごたに脳が悲鳴を上げるだろうと思うとチョコを買ってきた判断は正解だろう。
　部屋がおおむね暖まってきたところでベッドのほうで動きが。
「んーー…ぅ。……ぇぅ？」
　ぇぅ？ではない。
　目が合う
「……おはよぅ」
「おはよう」
「……えーっと、5Ｗ1Ｈ？」
　WhoWhatWhenWhereWhyHowと来ましたか。
「とりあえず、今日何日？…ﾍｯ…ｸｯｼｭｯ…」
「はい飲み物。今日は2011年の2月14日。そんでここはどこぞの学園都市。」
「そう。…んくっ。あ、おいし。」
　ホットチョコを飲む元気はあるらしい。
「落ち着いたらでいいんだけどさ、いろいろ訊いてｍ」
「あっ」
「！　どこか怪我とかあった！？」
「それは大丈夫よ…。それより…ちょっと」
　ジェスチャで近くに呼ばれ、隣に座る。
「え、何？」
「いいから。んくっ」
　ホットチョコを口に含んだまま肩に手がかけられ、体重が寄りかかってくる。甘い味覚。
（！？）
「おいしいでしょ。」
（え、いや、え！？……え！？）
　頭の中には『えっ』と『甘い』と『キス』しかない。あわてた右手がテーブルの上の半開きだったストレージボックスに当たり、デッキが散乱する。
「ふふっ。やっぱりね。」
艶っぽい表情のまま、口移しでチョコを飲ませてきた張本人が今度は自分のスカートをめくり始めた。視線は固定される。少年漫画にありがちなホルスターのようなものが太ももに固定していたものは銃ではなく、40枚のつや消しのスリーブに入ったデッキだった。
「決闘《デュエル》、お願いできるかしら？」




次回

美少女との共同らいつべ配信によりD0クラスタに走る衝撃。「Ledahさんの裏切り者！！」「しかしべこさんはあくまでLedahさんいじるのね」「ぐへへ、何を言ってんですか。僕は、あかべこですよ」過酷な試練の先にLedahは何を見る。次回、「シルバーレアは4枚そろってしまうのにレアが2枚足りない」君は、刻の涙を見る。

続きません。なぜ書いたし。サーセン。