(1)
六門世界の北部は『土』のエレメントが強い地域であり、特にその西部のほとんどは世界最大の森林である『ジオテランの森』で覆われている。そこには多くのエルフたちが住まい、世間に干渉することなく、悠久の時を静かに過ごしてきた。
そんな彼らも、エレメンタル・ストームと欲深き皇帝オルクスによって戦火に巻き込まれた一員となってしまう。森林の木々を護るため、ハイエルフである歌姫を筆頭に、トレントたちも立ち上がった。
(2)
ジオテランの森のさらに深部にある、エルフたちの楽園――樹上都市ルウェイス。近辺の地域は『世界樹の森』とも呼ばれ、トレントたちが多く生息している場所でもある。
エルフたちの王族は、ハイエルフと呼ばれる尊い種族。中でも、トレントたちとの共存のために『歌姫』と呼ばれる者たちがいる。『花園の歌姫』とは、『歌姫』であって『姫』ではない。それは森を守る女性ハイエルフの役職名や称号のようなものであり、そのため複数人数が存在する。ハイエルフの女性にとって、『歌姫』と呼ばれることは何よりの名誉である。。
(3)
《花園の歌姫アマレッティ》は歴代の『花園の歌姫』の中にあって飛びぬけて若く実力を開花させた歌姫。現在扱える力は『歌姫』としてオーソドックスなものであるが、魔法力および植物との共感能力に長け、将来を有望視されている。
ただし、幼さ故に精神面での成長は未熟で自信過剰、かつ植物以外の他者とはコミュニケーションが上手く取れず、その癖自分が世界で一番…と考えている、扱いが難しい子である。
(4)
通常、呪文魔法の威力は術者の力量に左右されることはない。詠唱と魔力の条件さえ見たされれば、ほぼ一定の効果が現れる。ただし、大地に秘められた無限のエレメントを用いることで、際限なく魔力を注ぎ込むことができる魔法も存在する。
《ワイルド・グロース》は植物の成長を一時的かつ爆発的に促進する呪文。歌姫に導かれた木々たちが、力強きその腕で彼女たちの歌声に応えるのである。
(5)
《花園の歌姫マドレーヌ》は理性的な落ち着きを持った正統派の歌姫。近年の歌姫たちは、フロマージュという伝説の存在に影響されているのかなにかしら「当たり前の殻」を破ろうとする者が多い。そんな中、マドレーヌの就任にはハイエルフたちも安堵したという。
もっとも、彼女の力はいい意味で正統派とは言い難い。『土』に秀でることが多いハイエルフの中にあって、『聖』の力を扱うことに長けているのだから。
マドレーヌの力強い歌声は、眩しい青空と萌える木々を想起させる。緑が生い茂る盛夏。それは、彼女が最も好きな季節でもあった。
(6)
《グリンウィンド・トッカータ》は植物と大地のパワーを引き出して、局地的な地震を起こす呪文。光り輝く地面に囚われた者は、激しい振動に足を取られて身動きが取れなくなるか、避けた大地に飲みこまれるかの運命を辿る。大地の呪縛は極めて強く、地に足を付けていない生物ですら吸い込まれるかのように落ちていくという。
(7)
エレメンタル・ストームの影響は、より『土』の極に近い『世界樹の森』にも影を落とす。
元々世界樹の森にはトレント以外にも、意志を持つかのように蠢く植物が生息していたのだが、一部の植物がトレントやハイエルフの意志から離れて爆発的に繁茂し、もとから世界樹の森にあった木々を枯らし始めるにいたったのだ。異常繁殖しているのは、いずれも他の生物を捕食する植物ばかり。このままでは生物の絶えた森になりかねず、ハイエルフたちは頭を痛めている。
(8)
《シザー・ハンズ》は赤く鋭い葉を持つように見える樹木。一部の枝の先が赤い刃状に変形しており、それらは2つが一対となって、まるでハサミのようなのでこの名がつけられた。生物学的研究により、このハサミのような刃は、葉ではなく花弁が変形したものであることが判明している。
種子が充分に大きく育つよう、刃で動物を捕えて養分にするようだ。
(9)
《ダーク・ヴァイオレット》は闇夜に咲く巨大なムシトリスミレ。人間の身の丈を超すほどの大きさであり、暗い紫の花を持つ。キラキラと妖しく輝く花粉を周囲にばらまいており、花粉を吸いこんだ生き物はその場で脱力、そのまま捕食されてしまう。そうして捕食した生物の養分を吸って、さらに大きく育ってゆく。
(10)
《花桃蟲アッサム》は蟲でありながら植物でもある特異な生物。体節の端々から咲き誇る美しき花は、アッサムに強大な力を与えることとなった。元々は小さな蟲に過ぎなかった体躯はドラゴンに匹敵するほどに巨大化し、石化をもたらす花粉はさながら竜のブレスのよう。
果たしてその本体は、蟲なのか、それとも花の方なのか?桃色に光る瞳から、その答えを伺い知ることはできずにいる。
(11)
《虹の多頭竜キリム》は独自の進化を遂げた植物竜。極めて巨大なドラゴンであり、4つの首はひとつの森を覆うほどの長さ。各首の先端には鋭い牙のある顎を持ち、自身と同種の生物を捕食することで自身の糧とすることができる。
自然界に存在するとは思えないほどの色鮮やかさ。巨体と相まって遠くからでも確実に目立つはずなのだが、目撃例は驚くほど少なく、ここ数百年でも数例しかないという。
(12)
《シャワー・ブロッサム》は花吹雪の幻影で相手を包み込み、『自分は窒息してしまう』と思い込ませる精神攻撃魔法。
この魔法に囚われた者は、今際の際にこの世のものとは思えないほどの美しい光景を望むことができる。優しいようでいて残酷な魔法である。
(13)
伝説の歌姫フロマージュに憧れた、ハイエルフの少女がいた。
歌の才能には恵まれていた少女だが、あまり裕福な家の生まれではなかったため、デビューまでにたくさんの苦労をする。長年の苦労が実り、見事歌姫の称号を獲得するも、周囲から望まれるのはきわどい衣装による過度な露出だった。良い意味でも悪い意味でも『第2のフロマージュ』と呼ばれ、実力はあるものの自身の在り方 に悩む昨今、同盟国である『鉄と鋼の王国』への慰問と新曲が決定。
遙かな旅路に思いを馳せながら、少女は今日も歌い続ける。
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テーマ:バックボーンストーリー | 投稿日時:2014/05/04 09:50 | |
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