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[2015/07/28 17:05]

様々な業種・視点からアナログゲーム業界を見る「ブシロードTCG内覧会」セミナー(後編) ( 3 / 3 )

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海外のゲームマーケットから見る国内の展望
株式会社ブシロード 代表取締役 木谷高明 様

最後に登壇したのはブシロード木谷社長。こちらの講演では、世界のカードゲームショップの様子や海外の市場。そこからみる今後の国内の展望について語られました。
▲海外のゲームマーケットから見る国内の展望▲ブシロード木谷社長


海外の専門店を見る

まず、海外の(カードゲーム)専門店をご紹介します。
だいたいどの国へ行っても、カードゲーム専門店は似たような感じですね。
こちらの写真はシンガポールですが、シンガポールの専門店もだんだん日本に似てきています。

唯一似てない部分を上げるとすれば、取扱いカードゲームの種類がどこもそれほど多く無いという点です。
マジック:ザ・ギャザリング専門店のような1タイトルだけのところもありますし、それ以外も大体3種類から5種類くらいまでの間で、メインで扱っているのはその中でも2種類から3種類程度です。
元々はレゴなどを売っていたお店や元ビデオ屋さん、元々ゲームを売っていたお店など、日本でも似たケースはありますが、他の業種のお店がカードゲームを取り扱い始めて、そのうち他の部分が縮小してカードゲーム専門店になったお店が多くありました。


次の写真はアメリカです。写真だけでは先ほどとあまり変わらないように見えますが、アメリカの場合面白いのは、日本に似た雰囲気のシンガポールとは違い、隣がスポーツカードであったりボードゲームであったり、元々そういうホビーの専門店の中にカードゲームコーナーがあるといった感じです。(カードゲームを扱っている)隣でウォーハンマーをプレイしているというような光景もありました。



▲イギリス▲ドイツ

こちらの写真はイギリス(左)とドイツ(右)です。イギリスやドイツもアメリカに似た雰囲気です。
アメリカやヨーロッパのお店に関しては、お客さんがそれほどいないというのも特徴的です。
それで何故お店が成り立っているのかというと、流通も小売も多くの粗利を取るからだと思います。例えば日本で150円で売ってるカードゲームが大体円換算すると400円、500円で売っています。

よく「日本の生産性が低い」という話が出ますが、日本人は絶対外国人よりもきめ細かく丁寧な仕事をしていて、これで生産性が低いってどういうことかと、ずっと不思議に思っていたんです。
ですがその理由は簡単で、例えば小売ベースで言いますと、1個売っただけで粗利が違うからなんですね。
ドイツなどは特にですが、ひと仕事あたりの生産性を高くということをとても意識している。カードゲームショップも日本のように密集せずに、ある程度の位置間隔を空けることで、商品1個の粗利をなるべく取れるようにしている。
このように、ある程度矯正していかないと利益は上がらないんだなと言う風に感じました。
あるところまでは競争は必要ですが、それ以上は矯正、もしくは差別化していかないと利益を上げていくのはなかなか難しいと思います。


ブシロードTCG 世界大会

▲Bushiroad WORLD CHANPIONSHIP 2015▲ブシロードTCG世界大会

左の地図は今年の秋に開催される世界大会の開催地です。日本では8カ所開催されますが、世界では24カ所で開催します。
中米のコスタリカでの開催は今回が初めてで、プエルトリコは2回目の開催になります。
昨年のプエルトリコでは、プレイヤーが150人集まるなど盛り上がっていました。
それからフィリピンも最近非常に盛り上がってきていまして、マニラのグランプリも500人くらい集まりました。
その他に多いところではニューヨークとロサンゼルスが800人くらいの参加があります。日本の中都市並みに集まる都市は結構世界にもあります。


世界は単一市場になっていく

何故世界が単一市場になっていくかといいますと、例えばアニメで言えば昔は番組を一か国一か国個別に販売していましたが、現在はどんどん配信に変わっています。
日本で配信されたものが、違法配信も含めてあっという間に世界中で見られるようになりますし、プロモーションもそういう方向になってきています。

クールジャパンという言葉がよく取り上げられています。
日本食は日本人が思っている以上に世界で拡がっています。シンガポールにもたくさん日本食屋さんがあったり、かなり普及しています。
逆に、アニメ・コミックに関しては、日本人が思っている程には拡がっていません。
シンガポールにおもちゃ屋さんが集まっているテナントが2か所あって、一か所は日本のフィギュアなども取り扱っていますが、もう一つは日本のコンテンツは無く、ハリウッドコンテンツがメインであったりします。

何故、日本がこれだけ様々なコンテンツを生むことができたかというと、そこには2つ理由があると思います。
1つは歴史の長さ。コンテンツを生む際にその国の歴史の長さというのはとても大事なんです。その国の歴史のポケットの中から引っ張り出すことでコンテンツは生まれるんです。
もう1つの条件は自国のマーケットの大きさ。この点で日本やアメリカは有利なんです。
この2つの条件で今まで日本は有利だったんですが、最近ではインターネットやスマートフォンのおかげで小さな国のメーカーでも気軽にゲームを配信できるようになり、それによって「共通言語の英語」という3番目の条件が加わってしまいました。

日本のコンテンツは素晴らしい面もあります。例えば東南アジアでもイラストを描ける人というのはたくさんいますが、漫画を描ける人は少ない。
漫画というのは、1人で絵を描き、ストーリーを考え、見せ方を考えと、相当技術的に難しいものです。
そういった面で、面白い漫画を描ける人がたくさんいる間は日本の優性もある程度保てるかとは思いますが、大きな流れとしては頑張らないと、将来的に日本のコンテンツは不利になるのではないかと思います。


新規カードゲームの立ち上げが容易に。しかし・・

最近の傾向を見ていますと、5年前や10年前に比べて新規カードゲームの立ち上げが容易になっていると感じます。
その1番の要因はSNSだと思います。今は(メーカーの販促の他に)そのカードゲームを知ってくれた人達が宣伝員になって販促をしてくれます。
10年前は面白いカードゲームを作っても、しっかり宣伝しなければ本当に立ち上がりませんでした。
また、その頃のカードゲームの生存率はとても低く、年に1本か2本生き残れば良い方で、生存数がゼロという時もありました。
ですが最近は生存件数はとても増えてきましたが、その代わり、以前は一回立ち上がってしまえば落ちずに続いていたのですが、最近は立ち上がってもすぐに落ちてしまいます。
その原因は(そのゲームの)会社(メーカー)やカードゲームの実力で立ち上がったのではなく、SNSなどの拡散に支えられて立ち上がったからだと思います。
そのようにすぐ落ちるのを見てしまうので、なおさら昔からの伝統あるカードゲームに寄り添っていってしまう。
これからもカードゲームはたくさん出てきて、成り立つ可能性は上がると思いますが、昔だったら考えられないくらい落ちるのも早くなっていくと思います。

昔から続いている(売上)上位のカードゲームは、所謂キャラクターもの以外はほとんど90年代にスタートしたものです。
そういう伝統や歴史の長さというものがブランドとなり、大きくものをいうジャンルになっているのではないかと思っています


今後の展望

当社(ブシロード)としては今後どうしていくのかと言いますと、目先はやはりスマートフォンゲームに勝たないといけません。
(戦略発表会の)冒頭の挨拶でも少しお話させて頂きましたが、私が前の会社で最初にアクエリアンエイジを立ち上げたとき、3か月に1回でも発売間隔が短いと言われていました。最初は半年に1回のリリースで、そのくらいが普通でした。
そういった流れが、オンラインゲームが登場した2001~2年頃に変わっていき、カードゲームの販売間隔も短くなっていきました。

今はどうかと言いますと、毎月なんらかの理由を付けてどのカードゲームも次々に商品をリリースしています。
それは何故かと言いますと、カードゲームの商品発売は一番の話題になるからです。
では何故 話題を作らなくてはいけないか。
スマートフォンゲームは電車の中でもトイレでもできてしまう。(それに対して)カードゲームは集まらないとできません。商品の発売は(ユーザーが)集まる理由になるわけです。

みんなで集まって楽しいというのはスマートフォンゲームでは(一部はありますが)基本的に味わえないものです。
カードゲームはそれが味わえる。なので、集まる理由をいかに作ってあげるかが、メーカーである私どもの使命でもあるし、ショップの皆さんもやった方が良いことだと思います。

お客様に負担感が無くて、商品を継続的にリリースしつつ話題を上手く作るというのが理想だと思います。
例えばヴァイスシュヴァルツは全部の商品を買う必要のないカードゲームなので、(お客様への負担を抑えながら)毎月話題を作ろうと思えば作れる。そういわけでこのようなリリースの仕方をしています。
ヴァンガードも5月に本製品(覇道竜星)、6月にバミューダ(歌姫の学園)、7月に刀剣乱舞とそれぞれ話題になっていますが、全部の商品を買っている人は少ないと思います。4月の大ヴァンガ祭から始まって継続的に話題を作ることができましたので、この流れは凄く良かったと思っています。
バディファイト、ChaosTCGも含めて、一か月の中でも週ごとに違うタイトルをリリースする体制がようやくできてきましたので、よろしければ当社に乗っていただきたいなと思います。

スマートフォンゲームに勝たなくてはいけないというところでもう1つ。
去年21歳の子に「ラジオってインターネットじゃなくても聞けるんですか?」と聞かれて衝撃を受けました。最近の若い人には地上波でラジオを聞くという感覚が無いんですね。
50年後の人は「なぜ、オンライン上にあるデータをわざわざ(メディアに)焼いて再生していたんですか?」「何故そういうパッケージを売っていたんですか?」「何かの記念品ですか?」と、たぶん理解できないと思うんです。
デジタルデータはすべてオンライン上になってパッケージは贈答品・記念品くらいしか残らない時代が、もう間もなく来ると思います。
誰が否定しようがこれは絶対に来る。

そういう時代にカードゲームがどう勝ち残るか、目先はスマートフォンゲームにどう勝ち残るか。
それは、お客様が集まるアナログ空間を常にお祭り状態にするしかないかなと思います。
もちろんカードゲームは競技という面もありますので、9割お祭り1割競技くらいのバランスを特に日本では作っていくしかないのではないかと思いますし、当社(ブシロード)としても皆さんのお店をお祭り状態にするように、商品や販促品、大会、その他もろもろ、いろいろやるようにして「あそこにいけば楽しい」「あいつに会いに行こう」「あのゲームで遊ぼう」という風に持っていきたいと思っています。


今回のセミナーのまとめ

今日のセミナーで並べさせていただいたのは、カードゲームショップという主食の隣に、もう1個おやつで何かを置いたら、もうちょっと店が面白く見えるのではないか、利益が出て売り上げが上がるのではないかということで、色々な形でご提案させていただいた次第です。

私の話の要点をまとめますと、世界はどんどん単一市場に向かっています。
その理由は簡単で、今までアニメの番組販売をしていて一個一個ひとつの国ずつ盛り上げていったものが、アニメのオンライン配信で世界的にネットで結びついているのが大きな要因です。
そこにスマートフォンゲームが入るという大きな波が来ていますので それに対抗するには本当に面白い空間を作って、そこにお客さんがくれる、楽しんでもらうというものを作るしかないのではないのかということです。
当社としてはそれを全面的に創りだし、またバックアップしたいと思いますので今後とも宜しくお願いいたします。

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